エルダー2022年5月号
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2022.514とができます。センサーは下着に装着するものや、腕時計タイプもあります。ただし、通信環境によっては管理者にうまくメッセージが届かなかったり、そもそも感度がよくない商品もあるようです。導入前には、使用する環境や商品情報を確認してください。定期的、または適時利用することができる涼しい休憩場所の整備も必要です。(2)熱中症予防のためのソフト対策熱中症の発生は、当日の体調に大きく誘発されます。二日酔い、寝不足、下痢、風邪気味といった、普段ならがんばれば仕事をこなせるような体調であっても、暑熱環境下では熱中症を引き起こす要因になります。特に高齢者は糖尿病、心臓疾患、高血圧といった持病を抱えている方も少なくありません。このような疾患も、熱中症の発症に影響を与える恐れがあるといわれています。始業時のミーティングで体調確認を必ず実施し、当日の体調がすぐれない高齢者には暑熱環境下での作業は行わせないようにしましょう。また、作業中に体調の不良を感じたときには無理せず速やかに申し出るよう、日ごろから伝えておきましょう。万が一のとき、高齢者が遠慮せずに申し出ることができる職場の雰囲気づくりも重要です。高齢者は喉の渇きを感じにくいので、喉の渇きを覚えてからではなく、定期的に水分と塩分を補給するようにします。非常に暑い場合は、20〜30分おきにコップ1〜2杯程度の補給が効果的だといわれています。また、さほど高温でなくても、高湿度や無風の条件では熱中症のリスクが高くなるので注意が必要です。実際に温度21度、湿度95%の環境で熱中症による死亡災害が発生しています。熱中症の予防は気温だけではなく、湿度や輻ふく射しゃ熱も考慮されたWBGT(暑さ指数)で行います。WBGTはISO7243として国際規格になっており、日本でも和訳され「JIS Z 8504」として規格化されています。また、新型コロナウイルスの感染防止のため、マスクを着用しながら業務を行う場合は、強い負荷の作業は避け、こまめに水分補給を行いましょう。また、周囲の人との距離を十分にとれる場所で、マスクを一時的に外して休憩することも必要です。熱中症では、初期対応の遅れが死亡や重篤化につながったケースが少なくありません。体調が悪そうな高齢者を休憩室で休ませていて、気づいたら亡くなっていたという事例もあります。高齢者は体温調節機能が低下しているため、休憩していても体温調整がうまくできず容態が急変することがあります。 消防庁の発表によると2018(平成30)年以降、熱中症の救急搬送数は年々減っています。要因としてその年の気候があげられますが、それ以外にもコロナ禍による医療機関への遠慮があったと推測されています。しかし、熱中症も一命にかかわることですので、高齢者の意識がぼんやりしていたり、自力で水分を補給できないようなときは、躊躇せず救急車を呼びましょう。また、救急車を要請する体制についても確認しておきましょう。熱中症の予防方法、緊急時の救急措置、熱中症の事例などについて労働衛生教育を実施することも重要です。おわりに5落語に登場するご隠居さんは博識で人生経験が豊富であり、熊さんや八っつあんのよき指南役です。退職後の高齢者がさまざまな分野で雇用され活躍しているのも、人生経験が豊富で気配りができ、マナーや常識を身につけているからでしょう。老化を避けることはできませんが、運動習慣、食生活、睡眠時間を見直すことで、健康寿命を延ばすことができるそうです。高齢者はつまずきやすいと書きましたが、生活習慣病を予防し、人生にはつまずかないようにしましょう。

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