エルダー2022年5月号
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エルダー15特集生涯現役時代の安心・安全な職場とは?生涯現役のキーワードは「健康」と「体力」170歳まで現役で働くことを考えるときにポイントとなるキーワードは「健康」と「体力」です。とはいえ、年齢とともに、健康面で不安なことが増えたり、体力面の低下を実感することがあります。年齢別の労働災害発生状況では、若年層と比べて高年齢層の労働災害が多く、2018(平成30)年には休業4日以上の災害は50歳以上が全体の半数を占めるようになり、なかでも60歳以上は全体の約4分の1(26%)を占めています(図表1)。特に、転倒災害、墜落・転落災害はその発生率が若年層に比べて高年齢層で高く、女性では特に高くなります。また、休業見込期間も高年齢層ほど長くなる傾向にあります。このため、厚生労働省の「エイジフレンドリーガイドライン」では、「高年齢労働者の安全と健康確保のためのチェックリスト(エイジアクション100)」(中央労働災害防止協会)についても触れています。健康については、そのなかに「高年齢労働者の健康管理」(図表2)があり、事業場で実施すべきこととして重視されています。「1.健康診断」と「4.がん検診」は、年代が上がるほどその重要性も重みを増していくことから、これまで以上に健康診断やがん検診の受診結果に基づく事後の対応に力を入れる必要があります。健康診断やがん検診を未受診のまま放置することや、受けても必要な精密検査に行かないなどの受けっぱなしは避ける必要があるでしょう。「2.メンタルヘルスケア」は、高齢労働者の特徴として、職場での役割ややりがいの変化、病気・体調の不良、睡眠の質の低下などにともなうストレスの増加やストレスへの耐性の低下を考慮する必要があります。また、「3.体力測定・運動指導」は、労働災害のなかでも高齢労働者に多く発生している転倒災害や腰痛の防止のために、体力測定を実施して体力の向上につなげることや、筋トレ・ストレッチ体操などの運動指導を行うことが対策の一つとされています。さらに、高齢労働者に対する安全衛生教育では、加齢にともなう体力・機能の低下による労働災害の防止を目的とした内容とすることが求められます。例えば、身体機能や認知機能においては、加齢により低下が目立つ内容とそれほど低下が目立たない内容があります。機能低下が目立つ内容としては、視力・聴力の低下、明生涯現役で働くための従業員の健康づくり産業医科大学 産業生態科学研究所 作業関連疾患予防学 非常勤助教 岩崎明夫解説2

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