エルダー2022年5月号
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2022.516るい屋外から暗い部屋や倉庫などの場所に入ったときに早く暗さに慣れて周囲が見えるようになる「薄はく明めい順じゅん応のう」が遅くなること、肩関節の可動域が狭くなること、筋力の低下、記憶力や新たなことを学習する能力の低下などが、若年層と比較すると目立つようになります。一方で、年齢とともに経験や知識は積み重なり有益である面もあります。このように、「エイジフレンドリーガイドライン」でも「健康」と「体力・機能」は生涯現役で働くための重要な要素として位置づけられています。高年齢層の「健康」の特徴と対応2(1)健康診断と保健指導、受診勧奨高齢労働者においても、労働安全衛生法に基づく健康診断を年1回は受診します。40歳以上では、「高齢者の医療の確保に関する法律」に基づく特定健康診査も兼ねています。肥満や体重増加による生活習慣病が増えてくることから、健康診断結果により、食事や運動などの生活習慣改善に関する特定保健指導を受けることができます。事業者は、健康保険組合や協会けんぽと連携して、事業者の健康診断を特定健康診査としてデータを連携し、高齢労働者が特定保健指導を受けやすくなるように高齢労働者への周知と配慮を行いましょう。50代、60代は自らも健康をふり返る機会が増える時期ですから、この時期に生活習慣の指導を受けて見直すことは70歳まで現役で働く基礎となります。保険者と協力して保健指導を積極的に活用しましょう。50代、60代は生活習慣病などの主治医を持つ人が増えてくる時期です。健康診断は早期発見のスクリーニングですので、異常所見が続けば、主治医を持つことも大切です。肥満や体重増加がなくても、生活習慣病になりはじめる年代でもあることには注意を要します。このように、健康診断は受診するだけではなく、その結果に基づき、保健指導を受けて生活を改善する、医療機関を受診するなど適切に活用します。また、健康の個別性や個人差が広がる年代でもあるため、各人の状態に応じた栄養のバランスや生活習慣に留意しましょう。(2)がん検診と精密検査受診高齢層で重要な健康課題としては、がんがあります。実際に、年代とともにこれらの疾病の発症や死亡者数は増えていきます。がん検診は無症状のうちにがんを発見することを目的としており、労働安全衛生法の健康診断ではありませんが、健康保険組合や協会けんぽが事業者とともに予防事業としてがん検診や人間ドックを実施する場合や健康増進法に基づく住民検診として各自治体が実施する場合などがあります。高齢層ではがんの発症が増えていくことをふま図表2 高年齢労働者の健康管理(「エイジアクション100」より抜粋)出典:中央労働災害防止協会「エイジアクション100」(1)健康診断と事後措置の確実な実施等①健康診断の確実な実施等②健康診断の事後措置③保健指導、健康相談等④精密検査や医療機関への受診の勧奨⑤病気休職後の職場復帰⑥体調不良時等に対応できる体制の整備(2)メンタルヘルスケア①高年齢労働者の特性への配慮②研修・情報提供③相談窓口の設置④ストレスチェック⑤職場復帰の支援(3)転倒・腰痛等の予防のための体力測定・運動指導(4)がんの教育と検診図表1 年代別の死傷災害発生状況(休業4日以上)出典:厚生労働省「労働者死傷病報告」(2018年)29歳以下 14%29歳以下 14%30~39歳 14%30~39歳 14%40~49歳22%40~49歳22%50~59歳24%50~59歳24%60歳以上26%60歳以上26%

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