エルダー2022年5月号
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エルダー23特集生涯現役時代の安心・安全な職場とは?過疎の町で高齢女性たちと起業高齢者が貴重な戦力として活躍株式会社日向屋は、国産の鶏肉、豚肉を使用し、独自の製造方法と添加物を使わないオリジナルの調味料を強みにレトルト食品の企画、製造・販売を行っている食品加工メーカーである。自社ブランドである「日向屋」の販売が8割を占め、主力商品の「鶏の炭火焼き」は宮崎県内の土産店のみならず、関東圏、関西圏、九州を中心に全国展開し、海外は香港、オーストラリアに輸出を行っている。同社は1995(平成7)年、もともと食品メーカーに勤めていた請うけ関ぜき伸しん代表取締役社長が35歳のときに、宮崎県東臼杵郡門かど川がわ町ちょうで創業。地元の製材所を定年退職して家庭に戻っていた女性たちに声をかけ、従業員4人でスタートしたという。当時、門川町は若年層が町から流出し、65歳以上の高齢者が人口の4分の1を超える過疎の状況であり、地域の高齢者は貴重な働き手だった。そんななか、働きやすい職場環境であったからだろう、従業員が知人に声をかけるなどして口コミで従業員が次第に増えていった。小ロットで2~3品目をていねいに手づくりするという、いうならば家庭料理の延長ともいえる仕事は、家庭で料理をしてきた高齢女性たちの長年の経験に裏打ちされた料理の腕や無駄のない段取りを活かせる絶好の場所だったようだ。同社では設立当時から65歳定年としていたが、高齢従業員がより長く働き活躍できる職場を実現するため、2009年に70歳定年制を導入した。70歳以降も一定の条件を満たせば、本人の健康状態などを考慮して継続雇用とすることを就業規則に明記している。「創業当時、地方の小さな町の労働力人口は少なく、特に食品加工業にとって高齢者は貴重な労働力でした。行政からの助成もあって、70歳定年制を導入しました。定年延長当時は、高齢従業員が10人ほどいて、仕事の後に畑仕事をする人や、ほかにも仕事を持つ人などが多く、事例1従業員の安全・健康管理は生産性向上につながる株式会社日ひゅうが向屋や︵宮崎県東ひがし臼うす杵き郡︶請関伸代表取締役社長(写真提供:株式会社日向屋)

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