エルダー2022年5月号
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2022.524短時間労働が基本でした」(請関社長)同社では60歳になったときに面談を行い、本人の意思で正従業員として働き続けるか、パートタイマーに切り替えるかを選ぶことができ、正従業員は月給制、パートは時給制をとっている。2022(令和4)年度からは新たな人事考課制度を導入し、年齢にかかわらず本人の仕事に対する姿勢、意欲、がんばりに応じて評価し、賞与はポイント制を採用し、会社への貢献度を評価している。こうした取組みが評価され、2009年に宮崎県高齢者雇用規範事業として表彰を受け、2010年には高年齢者雇用開発コンテスト(現・高年齢者活躍企業コンテスト)で厚生労働大臣表彰特別賞を受賞した。高齢者雇用の取組みが注目を浴びるようになると、自然と同社の事業にもスポットがあたるようになり、2010年には地元銀行が主催するふるさと振興助成事業「県産品・地域振興部門」に選出されている。従業員の負担を軽減することが生産性向上にもつながる高齢従業員が主力として活躍していることから、同社では、高齢従業員の労働災害を防止するための職場改善の取組みに注力してきた。かつては、原材料の搬入から製品の包装・搬出までの各工程の接続が悪く、運搬作業などの間接工程が多かったという。また、工程の多くが立ち作業で手先を使う細かな作業のため、疲れやすく、腰痛などの疾患に悩まされていた従業員もいたという。そこで、2007年に工場を増改築する際、床面のバリアフリー化を実施するとともに、運搬作業などの間接工程の負担を軽減するためのレイアウト変更を行った。また、原材料の運搬について、以前は人手による運搬か既製の台車を使用していたが、台車から原材料が落ちやすく、取り扱う商品が食料品のため特に神経を使う作業となっていたという。そこでトレーの規格を統一してトレー専用の台車を製作し運搬作業の負担を軽減。さらに、作業がしやすい作業台や補助台を製作するなどして作業負担の軽減を図った。「製造業は単純作業になるので、長時間同じ動きをすると疲労が出て、思うように作業が進まなくなります。より注意を払って作業を注視し、特に不調な原因を探ってみると、作業台の高さが合っておらず、作業効率が悪いことがわかりました。当時働いていた高齢従業員は身長が高い人から低い人までさまざまで、身長差があるにもかかわらず作業台は同じ高さでした。そこで身長に合わせて作業台の高さを調節しました。製造業を継続していくうえでは、生産性の向上の追求は欠かせません。従業員の負担を軽減することは、生産性を向上させることにもつながります」(請関社長)このほかにも、握力が必要な主力製品の成形において、高齢従業員の体力的な負担を減らすために製造工程、包装工程の機械化を行い、作業効率の向上につなげている。従業員同士による体調管理を徹底健康でいることが生産性を高めるまた、作業環境の改善とともに、同社では従業員の健康管理にも配慮した取組みを行っている。例えば、作業グループにおける積極的な声かけを行うことにより、従業員同士がお互いに体調を気にかけて共有するとともに、体調不良が見られた場合にはすみやかに帰宅させる体制を整備しているほか、健康状態を把握するための専任担当者の配置、業務記録・清掃状況の確認と合わせて体調の記録なども行っている。健康管理が事業に与える影響について、請関社長は、「まず顔色を見て、気分の良し悪しなどのヒアリングを行い、健康状態をチェックし、きちんと記録するようにしました。食品工場なので、異物混入を防ぐために、作業前には着衣に粘着ローラーをかけます。この際に健康チェックを行うようにし、調子が悪い人を早めに帰宅

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