エルダー2022年5月号
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特集生涯現役時代の安心・安全な職場とは?エルダー25※1 HACCP(ハサップ)……Hazard Analysis and Critical Control Pointの略。食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因を把握したうえで、原材料の入荷から製品の出荷までの全工程のなかで、危害要因を除去または低減させるために工程を管理し製品の安全性を確保する衛生管理手法※2 JFS-B規格……日本で開発された食品安全規格させることを徹底しました。製造業は出勤率が生産量に大きく影響しますから、少しでも欠勤を減らし、健康でいてもらうことが、生産性アップの鍵になります」と話す。また、取締役を務めている請関社長の奥さまが、高齢従業員や女性従業員の健康面、あるいは家庭の事情に気を配り、細やかにフォローをしてきたという。新工場設立とHACCP導入これまで以上に安心・安全な職場環境へ同社は、2021年6月に新工場を設立し、同年12月にHハサップACCP※1を含むJFS-B規格※2の認証を取得した。請うけ関ぜき仁じん専務取締役は、「この2~3年の間、施設、設備、機器といったハード面における安全環境の改善に力を入れてきました。新工場の設立にあたっては、働く環境という面で同社の工程のなかではとりわけ厳しいとされる焼成工程の面積を広くとって、安全性の向上と従業員の負担軽減を目ざしました。焼成の工程は、肉を炭火を使って焼き上げることから、室温が高くなり、煙も大量に発生します。特に夏場は厳しい作業環境です。これを緩和するために排気システムを取り入れ、また作業がしやすいように工夫を凝らして焼成機を独自に開発しました」と話す。現場で長年働く高齢従業員からは、「前とはまるで環境が変わって、本当に働きやすくなった」と、新工場の完成から1年近くがたったいまも、喜びの声が届くという。新工場の設立により、かつては手作業で行っていた工程を機械化することで、従業員の安全を確保すると同時に、大量生産を実現した。宮崎の名産品である「鶏の炭火焼き」は他メーカーでも手がけているが、多くが手焼きで生産している。同社は機械化を進めたことで、生産性が大きく向上したという。そのほかにも、出荷をする工程で、二重包装する商品の外装を手作業で包装していたが、これを自動化した。現在は、段ボールを組み立てる作業の機械化も検討しているという。「HACCP国際基準の認証取得については、工場の設計の段階から、専門のアドバイザーのサポートを受けて進めました。HACCPを導入すること自体が、従業員のみなさんに快適に働いてもらえることになると考えています」と請関専務は説明する。なお、工程のなかには機械化のできない作業もある。その一つが検品作業だ。同社ではこの作業を最高年齢者である78歳の女性従業員が担当している。異物混入や変色、残毛、カットサイズの規格を一つひとつチェックし、正しいサイズにカットされているかの検品を行うなど、日向屋の全景。手前左側の大きな建物が昨年設立したばかりの新工場 (写真提供:株式会社日向屋)請関仁専務取締役(写真提供:株式会社日向屋)

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