エルダー2022年5月号
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2022.526会社に大きく貢献しているそうだ。対面からオンラインへ営業職の身体的負担を軽減また、営業部門での最高年齢者は大分営業所に駐在する65歳の男性従業員だ。勤続年数は10年ほどで、入社当時は各企業を訪問する「足で稼ぐ営業スタイル」で商談件数をこなしていたが、昨今はコロナ禍の影響もあり、自宅からオンラインで商談を行うケースが増えた。食品業界全体の流れで、オンラインで開催される展示会も増えているという。同社においてはコロナ禍以前から、事業のデジタル化を図っており、取引先への納品までの管理がスムーズになるなど、営業職の負担もまた軽減されているという。会議や打合せもオンラインで実施している。対面での営業スタイルからオンラインへの移行について、前述の65歳の男性社員も初めは抵抗があったというが、これからの会社の方向性や導入のメリットをしっかりと説明したうえで、若い従業員にサポートを頼みながら対応してもらったという。「この方は『生涯、当社で営業を続けたい』といってくれていますし、会社として、これからも、お客さまとの折衝の最前線に立ち、力を発揮してほしいと期待しています」(請関専務)三世代が安心して働ける職場環境の実現に向けて同社の社是は「信頼と協力」である。「組織や集団を形成するとき、各々の身を守る手段として、自然発生的にこの『信頼と協力』が活用されてきました。強い信頼と強い協力関係を築けば、その度合いが強いほど、組織は安定し発展すると考え、基本方針としています。日向屋は強い信頼と協力によってつくられた輪のなかでこそ、自分たちの安心を得て、持てる実力を発揮し、それぞれの能力を開発できると信じています」(請関社長)創業当時は、下請けとして製造している商品もあったが、新商品の開発に力を入れてきたこともあり、いまでは自社ブランドを事業の柱として展開。売上げも毎年増収中で、こうした成長が県に認められ、2021年度宮崎県成長期待企業に認定されている。10年前の2012年に54人だった従業員数はこの10年で大きく増加し、2022年現在、93人の従業員が就業。そのうち60歳以上は26人、70歳以上は5人、全体の約3割が60歳以上の高齢従業員である。これまで同社では、中途採用により人材を確保してきたが、2021年度からは新卒採用もスタートさせ、高校を卒業したばかりの10代の社員が入社した。今後も事業の拡大にともない、若い世代が増えていくことが期待される。請関社長は「これにより、当社では10代から70代が一緒に働くということになります。70代の従業員にとっては孫と働くような環境です。日本人はお年寄りを敬う文化が根本にあり、また高齢者は職業倫理が高い傾向があるように思います。高齢者が上司に就いた方が、コミュニケーションが円滑になると私は感じています」と話し、多世代がともに働くことによる期待をにじませる。請関専務は、「私たちが実践するビジョンは『安心』です。商品の安心はもちろんですが、従業員のみなさんが働く環境づくりも同じです。すべての従業員が日向屋に勤めてよかったと思い、安心して働き続けられる会社になるのが私たちの目ざす姿です。ベテラン従業員の方には、これまでのさまざまな経験を活かし、職業倫理に基づいた正しい考え方を若い世代に継承してもらいたいと思います」とこれからの展望を話す。日向屋では、今後も幅広い年代の従業員が活躍することを期待している。そのために、労働災害防止に向けた取組みにも一層力を入れ、高齢者から若手まですべての従業員が安心・安全に働ける環境づくりを続けていくという。

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