エルダー2022年5月号
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2022.52株式会社FeelWorks代表取締役/青山学院大学兼任講師前川孝雄さん「自分はそんな育てられ方をされていない」と、戸惑いを感じる人も少なくありません。さらにコロナ禍でリモートワークが増えたことでコミュニケーションの総量が減り、「どうやってマネジメントするのか」とプレッシャーを感じている人も多くいます。 加えて、ミドル世代自身のキャリアのあり方も問われています。改正高年齢者雇用安定法が施行され、70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務となり、働く期間がさらに延びました。いまのミドル世代は、平成の30年間にわたり低迷した日本経済のあおりを受け、期待したポジションや給与を得ることができた人が少ないのが現実です。 一方で、若い世代のキャリア意識は高くなっています。私は青山学院大学でキャリア教育を11年間行っていますが、いまの学生は「会社に依存せずに自分のキャリアをつくっていきたい」という意識がすごく強い。多くの企業で1on1やコーチングなどを通じて、部―前川さんは、新刊『50歳からの人生が変わる痛快!「学び」戦略』(PHP研究所)をはじめ、ミドル・管理職に向けた書籍の出版や研修事業を営まれています。ポスト高齢者世代である40〜50代は、どんな不安や悩みを抱えているのでしょうか。前川 私が代表を務める株式会社FeelWorksでは、2008(平成20)年の創業以来、40〜50代を対象に大手企業400社以上で「上司力Ⓡ研修」を実施してきました。この世代は管理職層と重なりますが、いま、非常に大きな悩みを抱えていると感じています。働き方改革によって、残業の抑制など仕事の効率化が求められる一方で生産性の向上も要求され、ゆっくり部下を育てる時間がなく、マネジメントで苦労している人が多いのです。また、パワハラ防止法も施行され、強く指導し過ぎるとパワーハラスメントになりかねないので、研修で「部下一人ひとりに寄り添いながら育て活かしましょう」というと、下のキャリア面談を重視する施策が行われていますが、当の上司自身が自分のキャリアを考える余裕すらないし、考えていない人も多い。キャリア意識の高い若手とのギャップも含め、いろいろなものが降りかかってきて、まさに多重苦という状況に立たされています。―働く環境や価値観が大きく変化する転換期に立たされているミドル世代に、企業側はどう対応しようとしているのでしょうか。前川 ビジネス環境が変わり、旧来のアナログのスキルからデジタル時代に対応したスキルが求められるようになり、若い人材を入れてビジネスモデルなど事業構造を変えたいという本音もあると思います。ただし少子高齢化で優秀な若手をそれほど採用できないし、どこの企業も欲しがるAIやDX※1に対応できる研究者や技術者は労働市場にほんの少ししかいません。そうしたなかでミドル世代に対して自分でキャリアを考えて、学び直しによってスキルを磨き、即戦力として活躍してほしいという流れに変わりつつあります。 ただ、これまでは年功序列、終身雇用という暗黙の了解のもと、会社都合で働いてきたわけです。企業の後押しが絶対に必要です。これからはミドル世代が自分でキャリアを考残業抑制、生産性向上、部下の育成 etc.多重苦に立つミドル世代管理職※1 DX……デジタルトランスフォーメーション。IT技術の活用により人々の生活をよりよいものに変革させるという概念

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