エルダー2022年5月号
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2022.540きやすく、意欲を発揮できる環境・制度にするためには、それぞれのニーズに応じた勤務形態や時間を選択できる仕組みづくりが重要となります。また現在の実態として、70歳を超えた高齢社員が勤務し続けている状況のなかで、同社では『法律で定められたルールは最低限の水準である』という会社の方針に基づき、さらなる高齢社員の活躍推進に向け、定年後の継続雇用者の人事評価・賃金制度や高齢社員の健康管理、職場環境改善を提案しました」こうしたなかで、同社では多くの高齢社員が活躍しています。今回は、定年後も役職を継続し、部門管理の役割をになっている菖しょう蒲ぶひとみさん(66歳)にお話を聞きました。客室部部長として定年後も活躍菖蒲さんは、2008(平成20)年9月に52歳で入社しました。初めは料理を提供する派遣社員として勤務。その後パートナー社員、正社員へとステップアップ。そして5年前に、マネジメント能力を買われ客室部の部長職に抜擢されました。2021年4月に65歳で定年を迎えましたが、後継者育成のため引き続き部長として働くことを請われ、さらには執行役員に就任しました。客室部は、正社員が32人、パートナー社員が15人在籍ない役割をになっているため、同じ仕事を続けるケースが多いそうです。一方、本人が短時間・短日勤務を希望した場合は、仕事が変わることもあります。針谷代表取締役は、「ホテル旅館業界においては、入社数年後の離職率が高く、当社も10年勤続している中間層が薄い状況です。入社したみなさんには新卒・中途、あるいは年齢を問わず、当社で長く働いてほしいと思っています。2021年に改正高年齢者雇用安定法が施行されたことをきっかけに、定年年齢引上げの議題が役員会で何度もあがっており、68歳または70歳への定年引上げを検討しています。働き続けるか否かは、本人の希望次第ですから、その都度、希望を聞き勤務形態や待遇などを対応していきます」と今後の方針を説明します。2021年9月に、同社を初めて訪問した菊次プランナーは、「私自身も若いころに、こちらに宿泊したことがあるのです。コロナ禍においては、特に同社をはじめとする旅館・観光業は厳しい状況ではありますが、少しでもお役に立てればと思い訪問しました」と当時をふり返ります。菊次プランナーは、次のような観点でアドバイスを行いました。「同社では、定年後の勤務はフルタイム勤務を前提としていました。しかし、高齢社員がより働きたのが滋賀の商売人です。当社はアルバイト社員を『パートナー社員』と呼んでおり、『アルバイト』という呼び方は一切禁止しています。社員を分けへだてることはしていません」と話し、全社員を大切にする姿勢が伝わってきました。2022(令和4)年に創業94年目を迎え、100周年が目前に迫っている同社。2020年6月には、湖岸沿いの2000㎡の土地に高級旅館「松の浦別邸」をオープンしました。ペットと泊まれる宿として人気を集めており、多くの利用客が訪れています。開業以来、SNSで反響を呼び、予約が取れない部屋もあるそうです。現在、湯元舘は一部を改装工事中で、2022年7月に露天風呂つき客室を備えてリニューアルオープンする予定です。定年年齢の引上げを役員会で検討中同社の定年年齢は65歳。本人の希望があり基準に該当する場合は70歳まで継続雇用、さらに会社が認めた場合に年齢の上限なく継続雇用をしています。定年後は継続雇用を希望する人がほとんどです。定年後の勤務時間などについては、社員の希望を聞き個別に対応しています。定年後の働き方は二通りあり、一つは定年前と同じ仕事を続けるというもの。長年勤めた方はほかに代わりがい

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