エルダー2022年5月号
45/68

という四つの次元があるとしています(図表1)。自分のキャリアに関心を持ち、コントロールすることができ、探求する好奇心を持ち、自信を持つということです。四つの次元は、それぞれ、それに関連する「態度と信念」(Attitudes and Beliefs)、「能力」(Competencies)で構成されます。サビカスはこれらの頭文字を取ってキャリア構築のABCと呼び、このABCが、個人が発達課題や転機(トランジション)に対処する際に役に立つとしています。三つ目の「ライフテーマ」は、個人にとって「重要なこと」であり、なぜその職業を選んだのか、なぜ働くのか(Why)にかかわる概念です。サビカスは、人は「キャリアストーリー」(発達課題や職業上の転機〈トランジション〉が語られたもの)を語ることを通じて、その人にとっての働く意味を再構成するとしました。キャリアストーリーで語られることは、個人的な考えを含んだ物語的真実(narrative truth)ですが、これがあることによって、個人は変化に柔軟に適応しながら、未来に向けて、一貫性、連続性を持ったキャリアの物語を構築していくことができるとしました。サビカスの理論は、特にシニアを念頭に置いたものではありませんが、変化に対応するなかで、人生の目的・意味をどうとらえるかを重視するものです。シニアになる前から続くキャリアについて一連のストーリーとして解釈することは、シニア期のキャリアをとらえるうえで大いに役に立つものではないかと思います。ハンセン〜多元性と包含性3「統合的ライフ・プランニング(ILP:Integrative Life Planning)」を提唱したサニー・S・ハンセンについても、紹介したいと思います。統合的ライフ・プランニングとは、人生やキャリア設計にあたって、仕事に関することだけでなく、より全体的なアプローチをすべきであるという考えです。その背景には多くの領域で早いスピードで変化が生じ、これに社会が追いついていないということがあります。この理論では、①Labor(労働)、②Learning(学習)、③Leisure(余暇)、④Love(愛)を人生の四つの要素(「人生の四つのL」)であるとし、この四つが統合されること、すなわち、「働き、学び、余暇を楽しみ、愛することを大事にする」ことによって、人は意味のある人生を送ることができるとしています。彼女は、人生における六つの重要課題として、以下のことをあげています。①グローバルな視点でキャリア選択を行う② 多様な役割を組み合わせ、意味のある人生とする③ 家族と仕事のつながりを意識し、男女の役割を見直すエルダー43出典: Savickas, M. L.(2013). Career construction theory and practice. In Brown,S.D. & Lent,R.W.(Eds.), Career Development and Counseling: Putting Theory and Research to Work, NJ:John Wiley & Sons. p.158.図表1 キャリア・アダプタビリティアダプタビリティ次元態度と信念能力対処行動キャリア問題関心計画的計画能力認識、関与、準備無関心統制決断的意思決定能力主張、秩序、意思不決断好奇心探求的探索能力試行、リスクテーキング、調査非現実性自信効力感問題解決能力持続、努力、勤勉抑制シニアのキャリアを理解する

元のページ  ../index.html#45

このブックを見る