エルダー2022年5月号
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エルダー3企業村〞で仕事が完結することが多く、社外やグループ外のことをあまり知りません。ミドル世代の読者から寄せられる意見でもっとも多いのは「やりたいことがわからない」、「何が得意なのかわからない」というものです。やはり同質的な集団のなかにいると、同じようなスキルを持つ人も多く、自分の価値になかなか気づけません。特に自分の評価については、上司の人事評価だけが自分の能力だと思い込んでおり、会社の看板を外したときに自分が何の価値を提供できるのかわからないのです。新しい世界を知る、つまり「越境」することをくり返して、多様性のなかに身を置くことで本当の自分の持ち味を知るきっかけになる。それが学びです。副業もそうですが、社員が自発的に学ぶことを支援する仕掛けをつくるなど、企業にはそうした機会を積極的に提供してほしいと思います。―そのようなミドル世代が、60歳、65歳を超えて働き続けるために、どのような準備や心構えが必要でしょうか。前川 50歳前後の人は、課長であれば「部長、もしくは役員になれるかもしれない」と会社のなかでの職位と、それに応じて給与が上がっていくことが、モチベーションや自分のプライドと密接につながっています。ただし、50代半ばになると、役員になれる人はほんの一握りです。取締役になっても任期があり契約社員のような場合もありますし、結果を出せなければ降格し、ただの人になってしまう。65歳で退職したとしても人生は長く、健康寿命が80歳まで延びるとしてもあと、15年もあります。そう考えると大事なことは、まず自分のプライドの物差しを変える。「部長になりたい」、「年収1500万円あれば」という考え方をいったんリセットし、本当の意味で自分が喜びを感じられる働きがいを重視することです。 社会やだれかのために貢献することで得られる喜びもあります。人間は社会的動物ですし、人との接点で自分の存在意義が感じられえてリスキリングできるように支援していかないといけません。すでに企業のなかには出向や社外の副業経験などを、昇進の要素とするところも出てきています。―著書では副業など社外での活動も〝学び〞につながるといっていますね。前川 単に学校に通って勉強するだけではなく、いままで当然だと思っていた世界から一歩ふみ出して、違う世界の価値観に触れることで刺激を受けることも大きな学びだと考えています。特に大企業で働いている人は〝大副業・越境で自分を知ることが〝学び〞になる自発的な学びを支援する仕掛けづくりを

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