エルダー2022年5月号
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■■■■■■■■人事用語辞典いまさら聞けないエルダー534円)なお、従業員への法定外福利厚生の提供方法ですが、企業がパッケージで施策やサービスを提供する方法と、外部業者などと連携して、従業員にさまざまなメニューを提供し、従業員は一定の補助金のなかで自由に選択できるカフェテリアプランという方法に分かれます。福利厚生の実施状況とその背景経団連の報告書で気になるグラフがあるので紹介します(図表)。福利厚生費の推移を示したものですが、法定福利費が右肩上がりとなっています。これは急速な少子高齢化により一人あたりの健康保険や厚生年金保険などの負担が上がっていることによるものです。余談ですが、ここ何年も日本の給与額が上がっても手取りが増えないといわれています。この法定福利費の増大がその大きな要因となっています。法定外福利費は抑制傾向であることがグラフからみて取れます。2019年度での福利厚生費に占める法定外福利費の比率は22・2%に過ぎません。報告書には先の福利厚生項目別の経年推移が載っていますが、住宅やライフサポート関連はおおよそ減少傾向にあります。一方で着目したいのが医療・健康の項目については増加傾向にある点です。独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)が2017(平成29)年に行った『企業における福利厚生施策の実態に関する調査』でも、今後充実させたい施策については、メンタルヘルス相談や治療と仕事の両立支援、人間ドック受診の補助が上位にあげられています。本連載の健康経営の回(2021年6月号)でも触れましたが、従業員の高齢化や人手不足が進むなかで、従業員の健康の維持・向上が会社の生産性や業績に好影響を与えると企業側が判断していることがみて取れます。この点については、高度経済成長期やいわゆるバブル経済期などを通し全国から人材を集めるにあたり、特に低賃金の若年層の給与補填的な施策や生活施設の提供などを通して、人材獲得における競争力や社員の定着力の向上のために法定外福利厚生を充実させてきました。しかしながら、1990年代後半以降の経済の悪化にともなう人員過剰感を理由に法定外福利厚生は削減の方向で見直されることとなります。このように法定外福利厚生は経済状況や人手不足・過剰感に密接に連動しています。コンサルティングの現場で筆者が感じることとしては、近年は属人的になりがちな法定外福利厚生を削減し、仕事や成果による給与や賞与を底上げしていくケースと、法定外福利厚生を充実させ社員のモチベーション向上、採用競争力の強化をすすめるケースに分かれつつあることです。特に従来は中小企業は法定外福利厚生に力を入れていない傾向がありましたが、今後の中小企業の人手不足解消の解決策の一つになることは想像に難くありません。次回は「ダイバーシティ」について取り上げます。040,00030,00020,00010,00050,00060,00081(年度)0601969186111670,00090,00080,000100,0000.04.08.06.02.012.018.0(円)(%)14.016.010.0出典: 『福利厚生費調査結果報告』2020年12月18日・一般社団法人日本経済団体連合会図表  福利厚生費の推移法定福利費の対現金給与総額比率(右軸)法定外福利費の対現金給与総額比率(右軸)法定福利費法定外福利費2019年度 法定 84,392円法定外 24,125円

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