エルダー2022年5月号
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2022.556※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します西村孝たか史し、島しま貫ぬき智行、西岡由美 編著/碩せき学がく舎しゃ発行/中央経済グループパブリッシング発売/2640円笹島芳雄 著/労働法令/2200円1からの人的資源管理70歳就業時代の雇用・賃金改革―高齢者を活かす定年制とジョブ型賃金―改正高年齢者雇用安定法の施行から1年。70歳までの就業機会の確保に向けた具体策を検討している企業も少なくないだろう。本書はそうした企業に向けて刊行された。本書全体は、第1部「高齢者活用の時代と70歳就業法」、第2部「全社員統一型65歳定年制の推進」、第3部「ジョブ型賃金の推進・活用」の3部から構成されている。第1部は、日本における少子高齢化の現状と今後の見通し、2021(令和3)年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法の概要が紹介されている。第2部は、70歳就業時代における定年制のあり方を検討し、65歳定年制への移行を推奨。そのなかでも、高齢者を分離して取り扱わない「全社員統一型65歳定年制」が望ましいとしている。第3部は、人事管理施策のなかから賃金制度を取り上げ、高齢者を含む全従業員のやる気が出る賃金制度が求められているとし、そのためには「ジョブ型賃金システム」が望ましいということが述べられている。著者は企業の人事労務管理に精通した研究者で、賃金制度に造詣が深いことで知られている。70歳就業時代の人事労務管理のあり方や賃金制度の見直しに興味がある方に、すぐに役立つ参考書となるだろう。人事労務担当者の守備範囲とされる分野は、人材の採用・配置から異動、育成、評価、報酬管理、さらには労働時間管理や安全衛生管理まで、実に幅が広い。こうした幅広い業務にかかわる際に必要になる、基本的な知識を身につけるために苦労している担当者も少なくないだろう。本書は、企業の人事管理に精通した、第一線で活躍している研究者15人が全15章を分担し、人的資源管理の全体像を把握するために必要な知識をコンパクトにまとめた書籍。架空の家族が登場する「ミニケース」を導入部として各章に設け、本文では基本的な知識をわかりやすく解説し、さらに、重要な用語やトピックスなどは、コラムによってフォローしている。高齢者の雇用に関しては、第10章「退職管理・雇用調整」で取り上げ、本誌にもたびたび登場していただいている、千葉経済大学准教授の藤ふじ波なみ美み帆ほ氏が執筆している。大学生向けのテキストとして企画されたものなので、平易な解説が大きな特徴といえるが、各章で紹介されている「次に読んでほしい本」で、さらに理解を深めることもできる。全体像を学びたい新入社員や、新たに人事担当者となった人が手に取っても十分に役立つ好著である。平易な解説で人事管理の基本的な知識が得られる最良の入門書高齢者の能力を活かす定年制と賃金制度のポイントを詳述

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