エルダー2022年5月号
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エルダー57遠藤 功 監修/新星出版社/1430円上野友子、武石恵美子 著/光文社新書/946円本書は、著者の一人の上野友子氏の防衛省での事務官経験を活かし、女性の幹部自衛官、なかでも子育てをしながら働く自衛官に実施したインタビューで語られた言葉を中心にした構成となっている。客観的な記述とするため、もう一人の著者であり女性のキャリアを専門とする法政大学教授の武石恵美子氏とともに執筆された。特別な世界にいる女性たちの姿としてではなく、民間企業と同様に、男性社会という色彩が強い組織のなかで多様な課題に直面しながら対応し生活している女性たちとして取り上げているが、あえて圧倒的に男性が多い組織に注目することで、働く女性が直面するキャリア形成の問題点を鋭くあぶり出す内容となっている。出産、子育てをしながらぶつかる壁や支援など、キャリアを形成するうえで直面する課題や葛藤をどのようにとらえてキャリアを形成してきたのか。また、組織のなかの少数者が感じる違和感、周囲からのサポートへの感謝、仕事への強い使命感なども語られている。生なまの言葉には説得力があり、だれもが70歳まで働くことができる世の中が目ざされているなか、これからの女性のキャリア形成を考えるうえで、企業にとっても参考になる一冊といえるだろう。「マネジメント」と聞くと、経営者や管理職が身につける能力と考える人が多いだろう。しかし本書では、「マネジメント」=「管理」ではなく、「仕事の成果(パフォーマンス)を最大化するために、仕事に絡むあらゆるものを『いい感じにする』こと」がマネジメントであると説明。たとえば、「仕事をする環境をいい感じにする」、「人間関係をいい感じにする」、「仕事の段取りをいい感じにする」ことであり、そのためのスキルは「年齢や役職に関係なく、すべてのビジネスパーソンにとって必要不可欠」と指摘する。さらに、「幸せな人生を送りたければ、マネジメントを学ぼう」と呼びかけ、本書はまず、マネジメントの最小単位となる「セルフマネジメント」から解説し、「重点思考」、「整理整頓」、「ルーチン」をキーワードに、自分自身の仕事や生活を最適化するためのノウハウを紹介する。そのうえで、簡単には思い通りにならない他者で構成される集団の力を最大限に発揮し、成果を最大化させる「チームマネジメント」の取組みについて、ていねいに解説している。また、デジタル時代のマネジメントも取り上げている。イラストや図を効果的に用いており、気軽にかつ、体系的に学べる内容となっている。女性自衛官キャリア、自分らしさと任務遂行サクッとわかる ビジネス教養マネジメント働く女性が共通して直面するキャリア形成の葛藤や問題点を示すすべてのビジネスパーソンに必要なスキルが楽しく学べる山ざん藤とう祐子 監修、新にい村むら響子 協力/朝日新聞出版/1320円2022(令和4)年4月より、パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)が中小企業でも義務化されたことなどを受けて、職場におけるハラスメント対策に注目が集まっている。ハラスメントというと、セクハラやパワハラをよく耳にしてきたが、最近ではリモートハラスメント、ジェンダーハラスメント、マリッジハラスメントなど、さまざまな内容のハラスメントが生まれている。年齢に関するエイジハラスメントと呼ばれるハラスメントもあり、「世代や年齢の違いを理由にした、差別的な言動や嫌がらせのこと。世代ごとの志向の決めつけなどもさす」と本書でも取り上げて説明している。本書は、だれもが被害者にも加害者にもなりうるハラスメントについて、どういう言葉や言い方がハラスメントになるのか、人を不快にするのか、職場や日常生活でありがちな100のケースについて、「×アウト」、「△グレーゾーン」、「◎セーフ」の言い方を紹介するとともに、トラブル回避のためのポイントをわかりやすく解説。また、ハラスメントが起きない職場にする六つのルールなども示している。だれもが活き活きと働くことができる職場づくりの参考書にもなる、おすすめの一冊である。トラブル回避のために知っておきたいハラスメント言いかえ事典信頼される声かけの手法を100のケースで徹底レクチャー

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