エルダー2022年5月号
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エルダー63なかに叩き込まされました」出演者に顔と名前を覚えてもらい「宮田さん、お願い」といわれるようになるまでに30年ほどかかったという。現在は2人の弟子を指導するほか、顔師の技術をまとめた本の執筆を進めている。こうした本はこれまでなかったそうだ。「親方の時代は年間200日くらい働いていたそうですが、僕が一人前になった時は年間45日くらい。若い世代は、覚える機会がもっと少なくなっていますので、こういう本が必要だと思っています」「出演者に喜んでもらえる顔をつくりたい」という宮田さんは、いまも努力を欠かさない。「仕事のない日には、紙の上に眉を描く練習をしています。自分の腕に満足することはないので、一生勉強だと思っています」ホームページhttps://kaoshimiyata.web.fc2.com/(撮影・福田栄夫/取材・増田忠英)ながら描くので、勢いがなく、時間もかかってしまいます」宮田さんは1970(昭和45)年、26歳のときに顔師の第一人者である新あら井い文ふみ男お氏に弟子入り。以来、平日は会社員、公演の行われる土日は顔師という"二足のわらじ"の生活を、2005年に会社を定年退職するまで35年間続けてきた。弟子入りして最初の3年くらいはお茶出しが仕事。親方にお茶を出すと「俺が飲みたいときに持ってこいよ」と叱られるような厳しい世界で修行を続けてきた。「親方は何も教えてくれず、﹃見て覚えろ﹄というスタイル。親方の仕事を見ながらメモを取ったり写真を撮ったりしていると、﹃お前、そんなことをやっているから覚えられないんだ﹄と、メモも写真も全部捨てられ、とにかく頭の後進の技術習得のために顔師の技術本を執筆かつらの下につける羽二重は役柄に応じて主に3種類あり、すべて手づくり顔師が伝統的な技術を用いて施した化粧は、汗をかいても崩れにくい化粧道具。おしろい、眉、隈取りなど、用途によって複数の刷毛や筆を使い分ける羽二重の下につけ、頭を汚さないようにするための帽子は親方直伝令和2(2020)年度東京都優秀技能者(東京マイスター)知事賞受賞記念の楯上は立役用(侍)、左下は立役用(若侍、坊主)、右下は女形用 vol.319

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