エルダー2022年5月号
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エルダー7特集生涯現役時代の安心・安全な職場とは?はじめに1高年齢者雇用安定法が改正され、65歳までの雇用確保(義務)に加え、65歳から70歳までの就業機会を確保するための努力義務が事業者に求められています。実際、2020(令和2)年の就業者全体のうち60歳以上の占める割合は21・5%※となっており、高齢労働者の数は年々増え続けています。この状況のなかで、特に課題となっているのが労働災害の発生です。「労働者死傷病報告」(厚生労働省)によると、2020年の労働災害による休業4日以上の死傷者のうち、60歳以上の労働者の占める割合は26・6%に及んでいます。労働災害のなかで、もっとも発生件数が多いのが「転倒災害」です。2020年、転倒災害の発生件数は約3万件と全体の4分の1を占めており、そのうち骨折などにより約6割が休業1カ月以上となっています。労働災害による急な休職は、本人にとっても事業者にとっても大きな痛手となります。本稿では、70歳まで働くための安心・安全な職場づくりについて解説します。安心・安全な職場づくりに必要な予防の考え方2みなさんは、ご自身の血圧や血糖値を把握されているでしょうか? 例えば、血圧180/120mmHgという数値はどうでしょうか? 高いでしょうか? 多くの場合、このくらいの血圧値では自覚症状もなく、普通に日常生活を送ることができます。しかし、この数値が続く場合は高血圧と診断され、医師からは投薬治療などが推奨される状況です。それは、いままでの研究で、高血圧が脳血管疾患や心血管疾患を引き起こすリスクであることがわかっているからです。そして、自覚症状がなかったとしてもしっかり治療を行っておくことで、そのリスクを低下させることができることもわかっています。安心・安全な職場づくりにおいても、労働災害の発生を「予防」するために、作業環境や作業手順の改善を適宜行い、危険性・有害性の高い課題については災害が起こる前に対策を実施し、リスクを少しでも低下させることが重要です。身体機能・認知機能の変化3高齢労働者の労働災害の発生を防ぐために、発生の要因となる身体機能や認知機能の変化について知ることが必要です。なお、機能の変化※  総務省「労働力調査」総論70歳まで働くための職場づくり千葉大学大学院医学研究院環境労働衛生学 講師 能の川がわ和かず浩ひろ

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