エルダー2022年6月号
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特集ビジネスの最前線で輝く高齢者の力とは?エルダー9結果についての熟知、失敗経験などからのリスクへの対応力があり、「若手とは違うコストパフォーマンス」として、雇用形態が多様であり固定費でない活用が可能、若手には不可欠な教育・マネジメントコストがあまりかからないこと、それらの結果としてコストパフォーマンスの高い戦力であるということもあげられます。さらにシニア人材には「+アルファ」が期待できます。単に専門性を発揮して仕事をすることに加えて、各種経験からの知恵を周りに伝授できる、生き字引的な知識量があり周囲の疑問に答えられる、後進への人材育成力、リーダーシップや豊富な社外でのネットワークなどがあげられます(図表4)。シニア人材が組織にもたらす価値と方向性シニア人材が組織に提供できる価値として、「視座」、「胆力」、「関係力」、「知識・技能」とまとめることができます。役職・立場から得た多様な経験からの経営的視点・事業視点という「視座」、身につけた仕事への向き合い方や判断基準を行動によって示す「胆力」、これまでつちかってきた人脈などを活かし販路開拓や専門家の紹介などを行う「関係力」、長年つちかってきた専門性を現場で活かす「知識・技能」の4点が重要です。高年齢者雇用安定法の改正により、70歳就業への努力義務化が制定されました。雇用確保措置として、70歳までの定年引上げ、70歳までの継続雇用制度の導入、定年制の廃止という従来の三つの措置に加えて、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入、70歳まで継続的に社会貢献事業に従事できる制度の導入という措置が加えられたのです。つまり、雇用ではない形態でも一定の就業が継続されるという選択肢が追加されたということになります。そのような環境下で企業から見た自社のシニア人材活用の方向性として、経営の状況に合わせていくつかのパターンに分けた流れが進んでいます。できるだけ長くしっかり戦力として働いてもらう、本人の要望と会社の都合でほどよいタイミングまで働いてもらう、多様な選択肢を用意して社外での望む道を進んでもらう、という三つのパターンです。シニア個人から見た進路のポイントとしては、会社に残るか出るかということです。それを個人が意思を持って決めてほしいというスタンスの会社も増えています。それが「キャリア自律化」を促進する流れであり、その意味ではジョブ型などの働き方も増えてくると考えられます。内部人材としてのシニア活用のポイント先に述べたようにシニア人材の活用について、雇用契約で社内人材として活躍してもらう内部活用と、業務委託や準委任などの外部人材として活躍してもらう外部活用があります。それぞれの活用ポイントについて説明します。パーソル総合研究所の調査によると、シニア人材活用への課題感として、モチベーションの低さ、パフォーマンスの低さ、マネジメントの個人パフォーマンスに与える影響度合い01020304050607080(n=167・複数回答)業務に関する豊富な知識や経験がある78.4%35.9%人手不足を解消できる他の社員にスキルを継承できる人件費などのコストを抑えられる仕事に生かせる人的ネットワークがある47.3%54.5%76.6%出典:アデコ株式会社「働くシニアの意識とシニアの雇用に関する調査」(2019年)図表4 シニアを雇用することで感じているメリット

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