エルダー2022年6月号
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エルダー11特集ビジネスの最前線で輝く高齢者の力とは?「対症療法」が続く中高年不活性化問題いま、中高年の不活性化に多くの日本企業が苦慮しています。背景には、組織の高齢化、ビジネスの高速化などの要因がありますが、やはり重要なのが人材マネジメントの観点です。問題の構造全体について詳しくは、筆者の近著﹃早期退職時代のサバイバル術﹄(幻冬舎)を参照いただくとして、本稿では、「企業がシニア活用を考えるときのエッセンス」をお伝えします。もともと日本の伝統的な人材マネジメントの骨子、例えば職能主義的な資格等級も、長期雇用慣行も、年功的賃金カーブも、「蓄積」のロジックを強く帯び、組織の高齢化に対応しにくいという欠点があります。だからこそ、いまから半世紀前にも「職務給」などのいまでいうジョブ型の人材マネジメントが模索され、90年代の成果主義ブーム以降は、脱年功主義や賃金カーブのフラット化も続いています。しかしいずれも環境変化に耐えるだけの改革にまで結実することはありませんでした。この歴史認識が高齢人材マネジメント変革の出発点です。しかしいま、筆者が企業から受ける相談は、「不活性化したミドル・シニア層のモチベーションをなんとかしたい」、「70歳まで抱え続けられない」といった、「いま在籍するミドル・シニア層をどうにかしたい」という視点のものが目立ちます。高齢化が進み続けるこの社会では、たとえいまの年齢構成の歪みを乗り越えても、構造的にシニア問題が再生産され続けます。「解雇がむずかしい」といわれながら何度もくり返される日本企業の早期退職募集ブームは、抜本的処方箋を欠いた「対症療法」の波にほかなりません。「変化適応力」の低下がシニア活躍の最大ハードル現在、シニアに対する人事施策として、「職域開発」や「リスキル」、「キャリア自律推進」などが盛んに行われていますが、それらの施策に共通するハードルが中高年人材の「変わらなさ」です。もうあの人は学ばない、マインドが変わらない、居場所を用意できない⋮、シニアの課題はこのようにして代謝促進以外の選択肢を失います。年をとると生活も安定し、若いころのようには思い切った変化を起こすことができなくなる。一般論としてはその通りですが、重要なのは、その「変わらなさ」には企業の人材マネジメントもまた影響を及ぼしているということです。シニア人材の活躍に不可欠な内部労働市場のアップデート ︱対話型ジョブ・マッチングとは何か解説パーソル総合研究所 上席主任研究員 小林 祐ゆう児じ

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