エルダー2022年6月号
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特集ビジネスの最前線で輝く高齢者の力とは?エルダー21行錯誤の末、独自センサー開発に至るも、ノイズ面などの課題があったため、さらに進化させる努力を重ねて現在のセンサーを開発した。ビジネスコンテストなどに挑戦学びながら人とのつながりをつくる起業から現在まで、大村社長は技術者としての知識や経験に加え、会社員時代にプロジェクトマネージャーを務めたことや、転職をして中小企業での仕事も経験し、製品開発から販路開拓、外部研究機関との連携など、これまでのさまざまな経験が活かされていると語る。また、起業の準備として、商工会議所や信用金庫の創業スクールで経営に関する知識を学んだ。さらに、資金調達の目的もあり、ビジネスコンテストやアクセラレーションプログラム※に積極的にチャレンジした。自分が一番年上であることが多かったが、臆せず参加したそうだ。すると、出展したイベントがきっかけとなって顧客ができたり、よい人材との出会いに恵まれたりした。努力が実り始めたのは、2017年に入ったあたりからだという。静岡銀行の「第5回しずぎん起業家大賞」を受賞。続いて、浜松信用金庫の「第4回はましんチャレンジゲート(創業部門)」のビジネスプランコンテストで最優秀賞を受賞。同社の技術が広く知られるようになった。そうしたなかで、ヤマハ時代の元同僚がサポートしてくれたり、同社の技術に共感して「一緒に仕事がしたい」という人たちが集まってきた。大村社長は、向学心が旺盛で、新たに学ぶことをいとわず、また、さまざまな機会をとらえて人とのつながりをつくってきた。そうした一つひとつが結実したのだ。さらに2019年10月には、技術やアイデアを大手企業に売り込む、大企業とスタートアップ企業の協業促進イベント「イノベーションリーダーズサミット」で注目され、取引先が急増した。70代でも能力があれば働ける大事なのは、仕事への向き合い方2019年に、宮本了りょう営業本部長(72歳、執行役員)と営業技術担当の宮崎なおと東京支店長(67歳)が入社した。その後、坂本典のり正まさ製造部長(68歳、執行役員)、林正まさ之ゆき技術開発部長(62歳)が加わり、現在センサー事業は、大村社長をはじめこのメンバーが中心となって推進している。正社員の平均年齢は63・5歳。ミドル、シニアの採用を積極的に行っているわけではなく、若い人からの問合せや応募もあるものの、起業から間もないベンチャー企業で若手を採用するハードルはたいへん高いという。坂本製造部長は大村社長が以前に勤めていた企業で知り合った縁のある関係だが、ほかの社員は同社の求人に応募し入社した。それぞれ大手メーカーやソフトウェアハウスに長年勤務した経歴を持つ。そうした経験に加え、入社への思いなどを聞いて大村社長は採用を決めた。「給料は安くてもおもしろい仕事がしたい、そういう人たちが入ってくれています」(大村社長)大村社長より年上の社員も多いが、顧問のような存在として迎えたわけではなく、常に「一緒にやろう」という熱い気持ちを伝えており、そうした熱意と自らに向けられる大村社長からの期待が、社員一人ひとりの原動力になっているようだ。定年は70歳。その後は、1年単位で80歳まで継続雇用する制度を整えているが、大村社長は年齢で区切ることに疑問を感じているという。「一緒に仕事をしているメンバーは、仕事経験が豊富で、多くの知識や技術を有しています。突発的なことに対応できる柔軟性もあります。そして、好奇心や向学心もあります。それらを日本の産業のために活かそう、そういう気持ちでこの事業に取り組んでいると思います。60代※ アクセラレーションプログラム……大手企業や自治体が、新興企業や起業家などに出資や支援を行うことで、事業の発展を促進・成長させていくためのプログラム

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