エルダー2022年6月号
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2022.622でも70代でも、能力があれば働けます。ベンチャーキャピタルはシニアだけの会社に冷たいのですが、年齢で区切らず、仕事を見てほしいですね。何歳であっても、仕事への向き合い方が大事なのだと思います」同社で最年長の宮本営業本部長は、センサー事業で世界へ進出する計画を立てており、海外進出のために必要なことを常に学び続けているそうだ。同社は2021年、独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)が主催する「アクセラレーションプログラム」全6コースに参加するスタートアップ109社に選定された。参加企業は、アクセラレーターの実施するプログラムに参加し、事業構想策定、プロモーション活動にかかわる支援などを受け、海外投資家等に対する「DデモEMO DデイAY」を通じて海外市場展開、ネットワークの構築などを目ざすことができる。大村社長と宮本営業本部長は全20回の同プログラムを受講し、審査の結果、最終10社まで残り、2022年3月16日、都内で開催された「DEMO DAY」に参加してプレゼンテーションを行い、その内容はジェトロが開設する海外投資家・企業等へ向けたサイトにアップされた。世界へ出ていく扉が大きく開かれた。リハビリ用ロボットなど医療・介護・福祉分野での応用に期待同社の挑戦は、世界展開だけではない。センサー開発の原点は、福祉分野にあった。大村社長のお子さんには障害があり、筋力が弱く、手足にリンパ液がたまるため、乳児のときは大村さん自身がマッサージをすることもあった。毎日何回も行う家族の負担は大きく、マッサージをする指の動きを感知できるセンサーが開発できれば、リハビリ用ロボットに応用できると考えた。また、障害のある子どもたちが機能回復訓練を行う様子を見て、「何か力になれないか」と研究に打ち込んだ。これらの開発にはさらに高度な研究が必要だが、極細センサーを糸のように扱い、格子状に縫い込んだ「見守りシーツ」がすでに製品化を実現している。シーツの下に敷くことで、お年寄りや赤ちゃんがベッドを離れたりするとセンサーでわかるものだ。寝ている人の心拍や呼吸を感知することも可能だ。介護施設などで夜間に職員の仕事を軽減することができると評価を得て採用実績もあるが、まだコスト面が課題である。そこで、活用が拡大している産業分野で売上げを伸ばしてセンサーの量産化を図り、コストの課題を克服していきたいと考えている。また、指先にセンサーを装着して、作業者の指から触覚データを計測して共有することで、その触覚をどこにいても再現することができるセンサーの開発も進めている。センサーを織り込んだ布で、人の手のような高感度の触覚感度を再現できれば、リハビリを助ける機器などにも活用できるだろう。注目を集める同社のセンサー開発の背景には、豊富な経験や積み上げてきた技術力を武器に集まってきたシニアたちがいる。そしてシニアの起業には、旺盛な好奇心と向学心が大切だと教えてくれる。2022年3月16日、ジェトロ主催「スタートアップシティ・アクセラレーションプログラム」の最終選抜10社が参加する「DEMO DAY」で発表する大村社長

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