エルダー2022年6月号
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2022.624き方で、いままでの勤務経験を活かしていきたいかを確認している。その結果をふまえて、人事でそれに合致するポストを検討して配置を行い、1年更新の雇用契約となる。必ずしも、定年時の職場と同じ職場で再雇用になるとはかぎらず、異動する場合もある。これは、定年以前は全国転勤が前提なので、住居は東京にあるが、定年のタイミングで地方勤務というケースも少なくないからだ。このようなケースでは、できるだけ自宅から通えるところに異動して、再雇用となる。専門性やノウハウを発揮するために、引き続き同じ部署に勤務するというケースもあるが、定年後の単身赴任は稀で、自宅からの通勤を希望することが多いという。再雇用者を対象とする社内公募制「シニアお役に立ちたい」制度通常の再雇用制度に加え、2016年に始めたのが、社内公募制の再雇用制度「シニアお役に立ちたい」。もともと、この「シニアお役に立ちたい」には、原型となる現役社員向けの制度があった。同社は、働く地域が限定的な「エリアコース社員」と全国転勤をする「グローバルコース社員」の、大きく二つの社員区分で構成されている。本来は転居を前提としないエリアコース社員を対象に、採用難などさまざまな事情で人員が不足している地方部署の仕事について、社内公募で手をあげてもらう仕組みが、従来から運用されていた「お役に立ちたい」と呼ぶ制度で、これのシニア版というイメージでつくったのが「シニアお役に立ちたい」制度だ。この「シニアお役に立ちたい」のねらいは三つ。シニアは「自身のキャリアを活かして会社や組織の役に立ちたい」、「つちかった経験・知識を後輩に還元して育成したい」という思いを持っている人が多い。そんなシニアに活躍のフィールドを提供するということが1点目。また、同社は全国に拠点を展開しているため、なかには若年者の採用など人員確保が困難な拠点も存在する。2点目は、そのような人員確保に苦労している拠点の安定運営に貢献してもらうこと。3点目は、経験豊富なシニア社員と、現場の現役社員たちが連携し、知識経験・ノウハウを共有することで組織の力を高めていくことだ。社内イントラネットに、どの地方拠点で、どのような部署でどんな役割をになってもらうか、ポストを具体的に開示して、公募にかける。それを見たシニアが、そのポストだったらチャレンジしてみたいと希望して応募。その後人事での選考を経て合否判定を出すというのが、制度のおおまかな流れだ。「シニアお役に立ちたい」の仕事の内容は、専門性が高いというよりは、ややゼネラリスト寄りだが、高い経験値が求められるようなものが多い。例えば損害保険サービス。保険金支払いの部門であれば、自動車の事故などで、お客さまと折衝して事案を解決していくようなポストや、保険ビジネスの根幹ともいえる代理店の経営支援、特に新規の代理店のサポート業務などが典型的となる。通常の再雇用制度と「シニアお役に立ちたい」制度の違いは何か。あえて地方勤務を公募する理由は何なのか。人事企画部人事開発室の井上健太郎課長代理は、次のように説明する。「ポストとして、特に重い役割や非常に高い専門性をお願いするわけではありませんが、通常のシニア社員と比較して一定の職務手当を支給しています。あわせて、シニアのつちかってきた経験やノウハウをより発揮することができ人事企画部人事開発室の井上健太郎課長代理

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