エルダー2022年6月号
27/68

特集ビジネスの最前線で輝く高齢者の力とは?エルダー25るようなフィールドの提供がインセンティブになるような制度設計となっています」つまり「職場で強く求められて、シニアが持てる力を発揮して職場に貢献する。地方拠点の人員不足という問題解決とともに、シニアの働きがいのある第二のキャリアを実現することがねらい」だと強調し、その延長線上に「最終的には、組織全体の活性化を図りたいとも考えています」(井上課長代理)という。同制度を利用して活躍するシニアがいる一方で、思うようには応募者が伸びず、利用者の拡大が大きな課題となっている。その原因について、「定年年齢を過ぎてから、見ず知らずの土地に転居することはハードルが高かった。それぞれ、介護など個別の事情を抱えているケースも少なくありませんでした」(井上課長代理)と分析する。専門性の高いシニア人材を公募「シニア戦略ジョブ」制度このような状況をふまえて、2021年度から新たにスタートさせたのが「シニア戦略ジョブ」制度だ。「シニアお役に立ちたい」制度を基に、ネックになっていた転居をともなわずに、通勤できる首都圏エリアのポストを提示して、社内公募する制度を立ち上げた。「シニア戦略ジョブ」制度の大きなポイントは、首都圏のポスト公募であることに加えて、より高度な専門性や知識・経験、役割が求められるポストであり、処遇面でも、それに応じた手当を支給すること。また、通常の再雇用制度と「シニアお役に立ちたい」制度が時間給なのに対して、「シニア戦略ジョブ」制度では、月給制を採用している。「社内だけではなく、社外も含めて考えた場合、シニアがいままで蓄積してきたノウハウ、経験・知見を、引き続き当社で活かしてもらうためには、シニアにとって魅力ある制度設計にしなければならないと考えました」(井上課長代理)スタートした2021年度は、首都圏の各部署から、一定の専門性が求められるとともに、役割が大きく、難易度が高い23のポストで公募を行った。2022年度では、これを47ポストに拡大した。この「シニア戦略ジョブ」制度を活用した仕事の、具体的な例を紹介しよう。現在、社歴のほとんどを損害サービスの支払い部門で過ごし、そこで高度な顧客対応スキルを磨いてきたシニアがチャレンジしているのは、税理士などの士業を顧客とする特殊かつニッチな新しい保険領域。所属長は、「つちかってきた経験に裏打ちされた、寄り添うようなていねいな顧客対応が、新たな分野でも活かされている。自動車事故での対応など、一般の顧客に保険のプロとして対応するのとは違い、専門的な案件について、その道のプロを顧客として対応する業務は、だれもができるような領域ではない」と、その仕事ぶりを高く評価しているという。この「シニア戦略ジョブ」制度は、「シニアにも一定のチャレンジを求めていて、シニアの新しい知識や体験から貪欲に吸収して成長している姿は、受け入れる側にとっても大きな刺激となって、職場を引き上げていってくれる力を持っていると感じる」という声も聞かれ、「受入れ職場には、よい意味での波及効果が生まれています。これが、この制度のねらいの一つでもあります」(井上課長代理)という。定年後をどのように会社がサポートしてくれるのかは、現役世代も関心が高い。シニア人材の活用について、マイナスメッセージを現役世代に伝えることになっては、組織全体の士気が下がってしまうことにもなりかねない。「雇用の流動性が高まって転職があたり前になるなか、その市場のなかで、東京海上日動で勤務することの動機づけは重要で、ベテランになっても安心して働ける会社にしていくことは、シニアやミドルだけでなく、もっと若い層

元のページ  ../index.html#27

このブックを見る