エルダー2022年6月号
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2022.626にとっても非常に大切だと思います。そのため、処遇のあり方の検討など、制度をよりよくしていく方向で、さまざまな検討を行っていきます」(井上課長代理)一方で、同制度の利用実績もまた伸び悩み、大きな課題となっているそうだ。「まだまだ、手をあげるシニアが増えないのが悩みです。会社としては、シニアの活躍できるフィールドをきちんと用意したいと考えて取り組んでいるので、利用を拡大することが課題です」(井上課長代理)その対応策について、井上課長代理は、「提示するポストの幅や数だけでは効果が限定的だとすれば、やはり、処遇の問題にも触れる必要があります。また、外部の労働市場と比較して、魅力的な制度を整備するためには、処遇面とともに、シニアのマインドの扱いが重要な鍵かもしれません。定年を過ぎても会社に貢献したいというシニアのマインドを、どのように会社の制度のなかに落とし込んで実現させていけるか、検討を深めなければならないと考えています」と話す。研修と学び直しの機会を提供ミドルのマインドセットをうながすシニアに定年後も活躍してもらうためには、気持ちの切り替えなどシニア自身の意識改革も必要になる。同社が、意識改革に向けた取組みとしてミドル層に提供しているのが、「キャリアデザイン50研修」と「東京海上日動版ライフシフト大学」。どのように自分のキャリアを描いていけばよいのかということを、個人任せにするのではなく、会社からもしっかりと情報を提供していくことが重要であるという考えのもと、行っている取組みだ。「キャリアデザイン50研修」は50~57歳の希望者を対象として、人生100年時代のなかで、今後、どのように自分のキャリアを自ら開発していくのかを考える、マインドセットのための研修。受講希望者が多く、抽選になる場合もあるほどだという。もう一つが、去年から始めた企業内カレッジ「東京海上日動版ライフシフト大学」で、自発的な学び直しに向けた意識改革を目ざして、ロジカル思考やコーチング、コミュニケーションスキルなどの研修を行うもの。民間の研修会社が実施しているプログラムを、同社の社員向けにアレンジしている。東京海上日動版ライフシフト大学のコンセプトは、「ミドル層の社員一人ひとりが学び直しを通じて自分自身を内省し、自律的キャリア開発のためのマインドを養うとともに具体的アクションにつなげ、変化対応力を備える」ことで、ミドル層の活躍支援を強調。47~56歳の管理職を対象とし、「自らの発意で学び直し、変化対応力を身につけることを選択する人」が応募要件となっている。参加費用は自己負担。取組み初年度は、オンラインで1回3時間の講義を全8回実施、14人が参加した。今後も、テーマを見直しながら継続して実施する考えで、プログラムの実施だけでなく、受講者同士のネットワークを通じた相互研鑽の継続、さらに学びを深めるための学習機会の提供など、多彩な学び直し機会の構築を目ざすとしている。最後に井上課長代理は、「当社でも、シニアの活躍の場を広げるべく、いろいろなことを試しながら取り組んでいますが、まだまだ課題もたくさんあります。同じような悩みをお持ちの企業も少なくないのではないでしょうか。一緒にチャレンジしていきましょう」と締めくくった。

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