エルダー2022年6月号
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高年齢者雇用制度においては、再雇用後に有期労働契約となると、正社員との同一労働同一賃金をふまえた制度設計が必要となりますが、定年後の再雇用制度を複数設けることによって、正社員と近い業務内容および賃金②社会通念上の相当性を欠く場合に解雇を無効とするという考え方は、「解雇権濫用法理」と呼ばれ、長く日本の労働契約における解雇に関する制限として機能しています。まず、①客観的に合理的な理由については、解雇の理由が、主観的ではないという意味があります。さらに、この要件については、解雇事由が将来にわたって継続するものと予測体系の再雇用労働者と、正社員とは異なる業務内容や賃金体系による再雇用労働者の区別を明確にすることは、同一労働同一賃金との関係においても、有意義な制度設計と考えることもできるように思われます。されること(将来予測の原則)および最終的な手段として行使されること(最終手段の原則)の二つの要素を考慮して判断すべきという整理がされています。改善の機会を与えることや好転の見込みなどを考慮するというのはこれらの要素を充足するための準備であり、将来予測の原則や最終手段の原則を充足するかどうかを検討しなければなりません。次に、②の社会通念上の相当性については、本人の反省の態度、過去の勤務態度、ほかの労働者との均衡、使用者側の対応の不備の有無などのほか、違反などの反復継続性も考慮されて判断されることになります。将来予測の原則の例外について2即戦力が期待されるような管理職や高度専門職として採用された場合には、将来予測の原則から求められる改善の機会などの必要性について、新卒採用と比較すると、後退すると考えられています。例えば、会社が特定の職種の経験があり即戦力となる人材として募集し、英語力に秀でた人材を中途採用することとして、経験が必要であることを明示して募集し、中途採用された人材もこれを理解していた事例においては、雇用時に予定された能力をまったく有さず、これを改善しようともしない場合は、解雇せざるを得ないと判断された例があります解雇について1労働契約法第16条では、解雇に関して、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定められています。①客観的に合理的な理由および一般的には、文書による指導によって改善対象を明確化し、改善見込みがないことを期間や頻度によって判断する必要があります。改善見込みがないと判断する基準について、一概にはいえませんが、厳格な注意や指導に加えて、同様の命令違反がくり返されることが必要となります。A勤務成績・勤務態度の悪い社員を解雇するうえでの留意点について知りたい営業成績が芳しくなく、必要となる能力だけでなく業務に対する前向きな姿勢や向上意欲を欠く労働者がいます。会社としては、改善の機会を与えたうえで好転の見込みがなければ解雇したい意向です。改善の見込みがないと判断する基準などをどう考えればよいでしょうか。Q22022.640

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