エルダー2022年6月号
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2022.642東京都港区に本社のある三井化学株式会社は日本有数の総合化学メーカーとして、産業のあらゆる分野で私たちの生活を支えている化学製品を日々、世に送り出している。従業員数が1万8051人(連結2021〈令和3〉年3月31日現在)にものぼる同社では、社員の健康増進にも力を入れており、これまで「健康経営優良法人〜ホワイト500〜」(大規模法人部門)に6年連続で認定されるなど、さまざまな成果をあげてきた。そんな同社では、仕事と治療の両立支援制度を充実させる一方、産業医を中心として、どう病気に対処してよいのかわからない社員、主治医の専門用語や意図などが理解できない社員などの相談に乗るなど、必要なアドバイスやサポートを行う活動も展開してきた。そこで、同社の健康管理室の産業医、岡おか崎ざき浩ひろ子こさんと、人事部ダイバーシティ&インクルージョングループの安やす井い直なお子こグループリーダーに両立支援の取組みを、そして両立支援を受けている社員(匿名)にお話を聞いた。本人が制度を理解し取り組めるようにサポート 同社における健康支援体制の特徴は、本社をはじめとした研究所、主要工場の健康管理室に専属の産業医や保健師、衛生管理者などを配置するだけでなく、その健康管理室がグループ全社員に対する支援も行うという総合的な活動にある。同社が多くの支援策を整備するなかで、制度設計が速やかに行われ、実効性が上がっている背景には、医療者が社員として常駐していることが大きく寄与していると安井さんは語る。「専門家の立場から人事と職場の間に入ってもらい、どの程度の負荷をかけてよいかなど、客観的な意見をいただくことができます。職場の業務や制度なども含めて理解している産業医が、本人を介して主治医・職場・人事など仕事と治療にかかわる人すべてをチームとしてまとめ、復帰までの支援をしていくのです」(安井さん)しかし、チームとはいってもあくまでも主治医とやりとりをするのは本人に任せていると岡崎さんは強調する。産業医と主治医が直接かかわるという会社も多いが、同社では社員を通しての情報共有が基本だ。「個人情報の保護という面もありますが、病気に罹かかったのも、治療を受けるのも本人ですから、やはりきちんと病気のことを認識して、正しい理解のうえで治療を受けるべきだと思います。そのためにも必要以上に専門職間でやり取 加齢により疾病リスクが高まる一方、近年の診断技術や治療方法の進歩により、かつては「不治の病」とされていた疾病が「長くつき合う病気」に変化しつつあり、治療をしながら働ける環境の整備も進んでいます。本連載では、治療と仕事の両立を支える企業の両立支援の取組みと支援を受けた本人の経験談を紹介します。病気とともに働く三井化学株式会社さまざまな両立支援制度を拡充制度に関するガイドブックも作成し情報発信第三回

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