エルダー2022年6月号
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エルダー43りをすることは避けています」(岡崎さん)主治医から聞いたことを産業医に伝えるとなると、本人が病気と向き合う時間をつくり、主治医の話を理解していなかったことがわかるチャンスでもある。岡崎さんが「主治医は多分こういいたかったのではないですか?」と聞いてみると、実は違う意味で受け取っていたというケースだ。大きな病気がみつかれば、そのショックで頭が真っ白になり、主治医の言葉が頭に入ってこないこともある。そうしたときに産業医が的確なアドバイスをすることで冷静になることができるのだ。実際に支援制度を活用し、癌からの職場復帰を果たした社員からは、「健康管理室にはずいぶんと精神面で助けていただいたように思います。初めてのことですし、選択肢もいくつかあるなかで、相談するだけで、気持ちが落ち着きました」といった感謝の声が聞かれた。こうした地道な取組みの結果、現在同社では病気の発症を理由に退職する社員がほぼゼロとなった。ガイドブックなどを整備してより身近で使いやすいものに同社の特別休暇制度は、もともと通常の有給休暇(翌年まで持ち越し可)に加え、使い切れず失効した有給休暇を積み立てておける制度であり、「大病で入院を要するとき」に使うことを想定していた。しかし近年、治療方法の進歩と多様化により、通院治療も増加したため、治療に必要な場合は半日単位から取得できるように改正したものだ。そのほか、通院時の移動時間を削減するためにテレワークを活用したり、病気治療に関する時短勤務も導入するなど、時代に合わせた施策を数々行ってきた同社。「制度に関してはこの先はもうこれ以上増やせるものはないのではないかと思うほどです」と安井さんは語る。しかしその一方で、これらの制度の認知度がなかなか向上しないとも感じていた。「みなさん、当事者になってから制度に気がつくのです。ただでさえ病気で不安なときに、バタバタと情報収集するのもたいへんですし、休んで治療する以外の選択肢がないと思いこんでしまったりということもあります。そうなる前にどんな支援があるのか知っておいてほしい」と安井さん。そのために作成したのが『仕事と治療の両立支援ガイドブック』だ。どこにどういう情報があるのか、どんな手続きが必要なのかを整理して、社内イントラネットに掲載しているが、掲載しただけでなく、「病気になる前から読んでもらうにはどうしたらよいのか」が今後の課題だ。「特に若い世代は健康に対する意識が薄いので、入社時に説明しただけでは、ほとんど覚えていません。しかし、病気や介護はある日突然やってきます。そのとき慌てないように、ときどきパラパラっと見たり、いざとなったときに、まずそれを見れば何をすればよいのかがわかるというような内容の気軽に読めるハンドブックなどを、施策ごとにつくっていきたいですね」と、安井さんは同社の優れた支援制度のさらなる認知度向上を目ざしている。病気とともに働く仕事と治療の両立に必要な情報がまとめられている。病気になったらどのような行動が必要になるのかが時系列でわかるようになっているほか、どのような制度なのかイメージしやすいように事例を多く掲載するなどの工夫がなされている資料提供:三井化学株式会社 1.正しい情報を集めましょう 2.出社しながら治療を続ける 3.会社を休むことになったら? 4.療養開始~療養中 5.復職に向けて 6.参考例 7.プライバシーの配慮 8.情報開示のメリット 9.各種相談窓口10.医療機関での両立支援11.最後に仕事と治療の両立支援ガイドブックMCI 健康管理室人事部~病気になっても安心して働けるしくみ~

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