エルダー2022年6月号
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株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之人事用語辞典■■■■■■■■いまさら聞けない 人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。2022.644今回はダイバーシティについて取り上げます。用語としては広く浸透しており企業経営に大きくかかわるものでもあります。本稿では、定義や企業経営における位置づけ、取組み状況に焦点をあてて解説していきます。ダイバーシティは企業経営における重要〝戦略〞であるダイバーシティとはアメリカを発祥とする用語で、日本語では「多様性」と直訳されます。企業とのかかわりを示すものとしてわかりやすいのが、日本におけるダイバーシティの普及のきっかけをつくったといわれる「日経連ダイバーシティ・ワーク・ルール研究会」報告書(2002〈平成14〉年)の定義です。ここでは、「ダイバーシティとは『多様な人材を活かす戦略』である。従来の企業内や社会におけるスタンダードにとらわれず、多様な属性(性別、年齢、国籍など)や価値・発想をとり入れることで、ビジネス環境の変化に迅速かつ柔軟に対応し、企業の成長と個人のしあわせにつなげようとする戦略」としています。報告書でも指摘されていますが、20世紀半ばの高度経済成長期に代表されるように経営環境が安定し、経済が右肩上がりに成長していた時代には、従来の日本人・男性を主な対象とした終身雇用・年功序列を中心とした画一的な人員構成や価値・発想が日本企業の成長に有効とされていました。しかし、高度経済成長期の終焉から現在にかけては、本連載でも何度も取り上げている少子高齢化により雇用の対象を日本人・男性に絞り込むと立ち行かない、加速化する市場や生産のグローバル化に対して日本人の価値観や手法だけでは対応できない、高まる人権意識のなかで属性による処遇の差別は許されなくなっているといった課題が年を経るごとにますます大きくなっています。画一的な人員構成では解決できないこれらの課題に対し、企業の構成員を多様化し、個々人が持つさまざまな発想や能力を尊重して活かすことで、戦略的に対応していくことが企業におけるダイバーシティといえます。多様性の対象範囲は広いそれでは「多様性」とは一般的にどのようなことが想定されているのでしょうか。いろいろな分類がありますが、ここでは「個人属性」、「価値観・働き方」の二つの切り口でみていきます。報告書で指摘されている従来の日本人・男性・画一的な価値・発想との対比でイメージするとわかりやすいと思います。「ダイバーシティ」第25回

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