エルダー2022年6月号
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■■■■■■■■人事用語辞典いまさら聞けないエルダー45① 個人属性…女性の活躍や管理職・役員登用、若年層・高年齢者を含めた年齢にとらわれない雇用と活躍、外国人人材の受入れなどがあげられます。また、障害のある人やLGBT(性的マイノリティ)に対する理解と配慮をもった職場環境の構築も重要です。② 価値観・働き方…異なる意見の受容や尊重、さまざまな経験や能力をもった人材の雇用や適材適所、仕事と生活のバランスに配慮したワークライフバランスなどがあげられます。また、ここには本人の価値観や生活状況に基づく、限定された時間や職務への従事や、副業の推進など働き方の多様化も含まれます。これらの多様性を推進していくためには、属性別の雇用や管理職比率の目標値を設けたうえで具体的なアクションを定めたり、終身雇用・年功序列の人事制度からパフォーマンスや職務を重視した制度への転換、残業規制・有給休暇消化の推進、属性にとらわれない福利厚生の導入などルールや仕組みの面での整備が必要です。しかし、その前提となるのは多様性を認め合い受容する(インクルージョン)ことといわれています。いくら多様性を促進したとしても、互いの理解がなければ職場における対立が生まれ、企業・組織の成長どころか生産性を落とすことにつながりかねません。多様性と受容を包括して対応することが重要であることから、ダイバーシティ&インクルージョン(Diversity and Inclusion)とセットで呼ぶこともあります。日本における実施状況冒頭で述べたように用語としては浸透していますし、重要性についても理解も深まっているように思えます。しかし、現時点での実現度については一般的には疑問視されています。統計からみて取れますが、わかりやすい指標としてあげられるのが、女性の管理職・取締役比率の低さです。図表を参照すると一目瞭然ですが、欧米諸国と比較すると女性の就業比率はほぼ同等のなか、管理職比率は14・8%と顕著に低い状態にあります。取締役会における女性取締役の比率についても、トップのフランス44・6%に対して、日本は11・0%と同一の比較対象国のなかでもっとも低い位置にあります(成長戦略会議〈第10回〉配付資料 2021〈令和3〉年)。また同資料では外国人取締役の割合にも触れていますが、トップのドイツ30・0%に対して日本は4・0%とこちらも日本の低さが際立っています。このほか、国における男女格差を測るジェンダー・ギャップ指数について日本の順位は156カ国中120位と先進国のなかで最低レベル、アジア諸国のなかで韓国や中国、ASEAN諸国より低い結果と指摘されている(世界経済フォーラム「ジェンダー・ギャップ指数2021」)など、国際比較するうえで日本の後れを示す統計が多々出てくるといった状況です。今後、日本企業がダイバーシティをより強く意識して推進していかなければならないのは間違いなさそうです。次回は、「早期退職・希望退職」について取り上げます。01020304050(%)女性割合就業者の女性割合管理職の女性割合47.0%47.0%40.7%40.7%47.3%47.3%36.8%36.8%48.5%48.5%34.6%34.6%46.6%46.6%29.4%29.4%44.5%44.5%14.8%14.8%米国日本ドイツフランス英国出典:「成長戦略会議(第10回)配付資料」内閣官房成長戦略会議事務局図表  管理職の女性割合の国際比較(2019年)(注) 日本は総務省「労働力調査(基本集計)」、   諸外国はILO"ILO STAT"における「管理的職業従事者」の女性割合(出所) 内閣府『男女共同参画白書 令和2年版』(2020年7月公表)を基に作成。

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