エルダー2022年6月号
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2022.646特別寄稿はじめに2020(令和2)年5月29日に成立した、「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」(同年6月5日公布)が2022年4月から施行されました。重要な改正ポイントは図表1の通りです。本稿は、年金制度改正の背景をふまえ、改正法のポイントや留意点について解説します。Ⅰ 改正の背景と目的わが国の人口推移を基に今後の社会・経済の変化を展望すると、少子高齢化と健康寿命の延伸により、現役世代については人口の減少と社会保障費負担の増大は避けがたく、労働市場における人手不足はより進行することになります。一方、就労に対する価値観が多様化するなか、高齢者や女性の就業が進み、より多くの人の変化を年金制度に反映し、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図るため、短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大、在職中の年金受給のあり方の見直しなどの措置を講じるものです。また、年代を問わずあらゆる世代が抱えていると思われる年金制度に対する漠然とした不安や誤解を解消するとともに、将来に向けた安定した年金制度を持続させることも目的の一つと考えられます。Ⅱ 改正法のポイント1 被用者保険の適用拡大(1)短時間労働者への適用拡大措置① 事業所における企業規模要件等の 段階的引上げ一定規模以上の企業には、アルバイト・パートタイマーなどの短時間労働者を厚生年金の適用対象とする義務があります。この企業規模要件は、改正前は従業員数500人超でしたが、2がこれまでよりも長い期間にわたり多様な形で働くようになることが見込まれます。今回の年金制度改正は、こうした社会・経済株式会社田代コンサルティング 社会保険労務士 田た代しろ 英えい治じ多様な働き方に対応する年金制度へ2022年4月以降の年金制度改正のポイント図表1 年金制度改正のポイント※筆者作成重要な改正法のポイント施行期日1.被用者保険(厚生年金保険・健康保険)の適用拡大(1)短時間労働者への適用拡大措置(2)その他の改正事項(1)2022年10月2024年10月(2)2022年10月2.在職中の年金受給の在り方の見直し2022年4月3.受給開始時期の選択肢の拡大2022年4月4.確定拠出年金の加入可能要件の見直し等2022年4月、5月、同年10月(注) 今回の改正では、上記以外に[国民年金法、厚生年金保険法、年金生活者支援給付金の支給に関する法律、児童扶養手当法など]の改正も行われています

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