エルダー2022年6月号
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エルダー47多様な働き方に対応する年金制度へ2022年4月以降の年金制度改正のポイント特別寄稿022年10月に従業員数100人超、さらに2024年10月に従業員数50人超と段階的に拡大します。企業規模要件の「従業員数」は、適用拡大以前の被保険者人数(フルタイムの労働者と週労働時間が通常の労働者の4分の3以上の短時間労働者の合計)をさし、法人の場合は同一の法人番号を有する全事業所単位、個人事業主の場合は個々の事業所単位でカウントします。なお、従業員数は月毎にカウントし直近12カ月のうち6カ月で基準を上回ったら適用対象となり、一度適用対象となると従業員数が基準を下回っても引き続き適用される点に注意してください(ただし、被保険者の4分の3の同意で対象外となることが可能です)。②短時間労働者を 適用対象とすべき要件の一部緩和短時間労働者の適用要件の一部が緩和されます。具体的には勤務期間は「1年以上」という要件が撤廃され、フルタイムなどで働く被保険者と同様の「2カ月超」とします。なお、現行制度の運用上、実際の勤務期間にかかわらず、基本的に下記のいずれかにあてはまれば、勤務期間を1年以上見込みと扱いますので、適用除外となるのは、契約期間が1年未満で、雇用契約書等に更新可能性の記載がなく、更新の前例もない場合にかぎられています。(参考)勤務期間を1年以上見込みと扱うケース•就業規則、雇用契約書等その他書面において、契約が更新される旨または更新される場合がある旨が明示されていること•同一の事業所において、同様の雇用契約に基づき雇用されている者が更新等により1年以上雇用された実績があること以上の要点をまとめると、図表2のように整理されます。③短時間労働者への対応改正前の年金制度では、配偶者の扶養に入っている方(国民年金第3号被保険者、健康保険被扶養者)が年収130万円を超えた場合は、原則的に扶養を外れ、配偶者自ら国民年金・国民健康保険に加入し、保険料を全額負担する必要がありました。今回の改正後は、被用者保険適用基準106万円(月額8万8000円の年額換算)を超えると被用者保険に加入することになり、被保険者として保険料の負担が発生します。しかし、負担する保険料は事業主と折半することができ、将来の年金給付や健康保険の傷病手当金などの保障は手厚くなります。また、雇用契約を結んだ時点で事前に被用者保険の適用・非適用が定まり、「被扶養認定基準(130万円)の壁」のように、年末に年収を抑える調整を行う問題はなくなります。短時間労働者には、被用者保険に加入するメリットを含めていねいに説明し、理解を得ることが望まれます。(2)そのほかの改正事項今回の改正では、被用者保険の非適用業種の見直しも行われます。改正前は、常時1名以上使用される者がいる法人事業所、および常時5名以上使用される者がいる法定16業種に該当する個人の事業所は、被用者保険が強制適用される一方、農林漁業、士業、宿泊業等は法定16業種に入らず、強制ではなく任意適用とされてきました。今回の改正では、非適用業種(法定16業種以外の個人事業所は非適用)が見直され、法律・会計事務を取り扱う士業(図表3)が追加され、法定17業種になりました。また、健康保険についても、被用者保険として厚生年金保険と一体として適用拡大され、国・自治体などで勤務する短時間労働者に公務員共済の短期給付(医療保険)が適用されます。2 在職中の年金受給のあり方の見直し(1)在職定時改定の導入改正前は、老齢厚生年金の受給権を取得した後に就労した場合は、退職や70歳到達により厚生年金被保険者の資格を喪失するまで、老齢厚生年金の額は改定されませんでした。しかし、高齢期の就労が拡大浸透するなか、就労を継続

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