エルダー2022年6月号
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エルダー49多様な働き方に対応する年金制度へ2022年4月以降の年金制度改正のポイント特別寄稿した効果を退職まで待たずに反映することで、年金を受給しながら働く在職受給権者の経済基盤の充実を図ることが重要との認識に立ち、新たに在職定時改定を導入します。この制度は、65歳以上の在職中の老齢厚生年金受給者について、年金額を毎年10月に改定し、それまでに納めた保険料を年金額に反映するもので、具体的な制度の仕組みは図表4、運用のイメージは図表5の通りです。(2)65歳未満の在職老齢年金制度の見直し在職中の60〜64歳の労働者を対象に、年金を受給しながら働き続けることを促進する改定が行われました。改正前は賃金と年金受給額との合計が月額28万円を超えると年金の一部または全額が支給停止されていましたが、改正後は年金の支給停止となる基準額が47万円に引き上げられ、65歳以降の方と同額に緩和されます。具体的には、図表6の通り、総報酬月額相当額と老齢厚生年金の基本月額の合計が「47万円」以下であれば年金は全額支給され、超えた場合は超えた額の1/2の年金が支給停止となります。3 受給開始時期の選択肢の拡大近年、わが国の健康寿命が延伸したことにより高齢者の就業期間も長くなったことから、年金の受給開始の選択肢も拡大する改定が行われました。これにより老後のライフプランの選択肢も広がることになります。改正前は、年金の受給開始年齢は原則65歳、希望により60歳から70歳の間で受給開始時期を自由に決めることができました。改正後は、受給開始の原則65歳は変えず、受給開始年齢を60歳から75歳の間に拡大しました。これにともない、図表7のように、65歳から75歳間でくり下げた場合、1カ月につき0・7%(2022年4月1日以降70歳到達者から適用)増額された年金(最大84%増)が支給されます。一方、受給時期を65歳から60歳間でくり上げた場合、1カ月につき0・4%(2022年4月1日以降60歳到達者から適用)減額された年金(最大24%減)が支給されます。4 確定拠出年金の加入可能要件の見直し等(1)確定給付企業年金と確定拠出年金のアウトライン確定給付企業年金(以下、「DB」)と確定拠出年金(以下、「DC」)は、拠出や給付の仕組みは異なりますが、公的年金の給付と相まって国民の老後の所得確保を図るという制度の目的は共通しています。DBは、あらかじめ加入者が将来受け取る年金給付の算定方法が定められ、資産は集団・加入者全体で管理され企業が運用します。DCは、あらかじめ事業主・加入者が拠出する掛金の額が定められ、資産は加入者単位で管理され個人が運用します。なお、DCは掛金を企業が負担する企業型DCと、掛金を加入者が負担する個人型DC(iDeCo)に区分されます。(2)確定拠出年金(DC)の加入可能年齢の引上げ企業型DCの加入者は、改正前は厚生年金被保険者のうち65歳未満の者とし、60歳以降は同一事業所に継続して使用される者に限定されていました。改正後は、こうした年齢要件や60歳以上の同一事業所勤務要件はなくなり、70歳未満の厚生年金被保険者であれば加入可能とされ、異なる事業所に転職した場合も70歳まで加入者となることができます。一方、個人型DC(iDeCo)は、改正前は国民年金被保険者(第1号・2号・3号)のうち60歳未満の者に限定されていたため、例えば、第2号被保険者である民間会社員で60歳以上の者は加入できませんでした。改正後は、60歳未満とする年齢要件がなくなり、国民年金被保険者(65歳未満)であれば加入できるようになります。また、これまで海外居住者は個人型DC(iDeCo)に加入できませんでしたが、国民年金に任意加入していれば加入できるようになります。以上の要点をまとめると、図表8のように整理されます。(3)受給開始時期等の選択肢の拡大改正前は、確定拠出年金(企業型DC、個人型DC)は、60歳から70歳の間で各個人におい

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