エルダー2022年6月号
53/68

エルダー51多様な働き方に対応する年金制度へ2022年4月以降の年金制度改正のポイント特別寄稿され、あまり活用されていない状況でした。こうした状況を打開するため、掛金の合算管理の仕組みを構築することで、規約の定めや事業主掛金の上限の引下げがなくても、全体の拠出限度額から事業主掛金を控除した残余の範囲内で、iDeCo(月額2・0万円以内)に加入できるように改善を図ります。この改正により、例えば企業型DCに加入する場合は、事業主による掛金が拠出限度額(月額5・5万円)未満の加入者は、月額2・0万円以内かつ事業主掛金とiDeCo掛金の合計が拠出限度額(月額5・5万円)を超えない範囲内で掛金の拠出が可能になります。また、その従業員があわせてDBなどにも加入する場合は、事業主掛金が月額2・75万円未満の加入者は、月額1・2万円以内かつ事業主掛金とiDeCo掛金の合計が拠出限度額(月額2・75万円)を超えない範囲内で掛金の拠出が可能になります(図表11)。③そのほかの改善そのほかには、企業型DCの規約変更、企業型DCにおけるマッチング拠出とiDeCo加入の選択、DCの脱退一時金の受給などについても手続きの改善が図られます。5 年金制度改定による企業対応今回の改正は、アルバイト・パートタイマーなどの短時間労働者や高齢労働者、フリーランスが増加するなかで、多様な働き方にも対応できる年金制度を目ざしたものです。こうした労働者については、近年「よい人材確保のため」、「女性やシニアの有効活用」、「介護や看護、持病などの事情を理由とした貴重な戦力の離職防止」として採用する企業も多くなっています。さまざまな雇用形態を取り入れ、柔軟な働き方が可能な社内体制を構築することが企業には不可欠であり、今回の制度改定も年金制度の面からそのことを促進するものと思われます。企業においては新たに対象者となる従業員に対し、説明会の開催などを通して改正内容の周知を図り、そのうえで必要な手続きを進めていくことが求められます。なお、今回の改正では、国民年金手帳から基礎年金通知書への切替え、短期滞在の外国人に対する脱退手当金の支給上限を3年から5年に引上げ、また年金生活者支援給付金の支給に関する法律では、新たに支給対象となりうる方が請求漏れとなるのを防ぐため、所得や世帯情報の照会の対象者が見直されます。児童扶養手当法では、児童扶養手当と障害年金の併給調整の見直しが行われ、ひとり親の障害年金受給者が児童扶養手当を受給できるようになります。改正内容を把握したうえで実務作業の準備を進めてください。図表11 企業型DC加入者の個人型DC(iDeCo)加入要件の緩和出典:厚生労働省「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の概要」iDeCoの加入を認める労使合意に基づく規約の定め等がなければ、加入者全員がiDeCoに加入不可現 行見直し内容事業主掛金事業主掛金事業主掛金規約の定め等を不要とすることで、これまで加入できなかった多くの者がiDeCoに加入可能事業主掛金と加入者掛金の合計事業主掛金5.5(万円)(万円)5.5この層については、拠出限度額に収まるようiDeCo掛金の額の調整が必要となる場合がある選択iDeCoiDeCo事業主掛金と加入者掛金の合計事業主掛金事業主掛金5.5(万円)5.5(万円)(万円)5.5(万円)5.5上限の引下げ2.0万円3.5万円3.53.5これまで加入できなかった多くの者が加入可能に3.52.0※企業型DCと確定給付型を実施している場合は、 5.5万円→2.75万円、3.5万円→1.55万円、2.0万円→1.2万円

元のページ  ../index.html#53

このブックを見る