エルダー2022年6月号
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エルダー61事業の背景と概要「生涯現役社会」の実現に向けた、地域のプラットフォームをつくる「生涯現役促進地域連携事業」が大きく見直された。従来のように、高齢者雇用のための独立した協議会を新たに設置するのではなく、地域で活動する既存の協議会に、高齢者の雇用・就業機会を創出する機能を付加する事業設計となっている。背景には、2021(令和3)年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法がある。70歳までの「就業確保措置」が企業の努力義務となるなど、働く意欲のある高齢者がその能力を発揮し活躍できる環境を整備する必要性が高まった。そのためには、企業内での雇用だけでなく、高齢者のニーズに応じ、地域において高齢者が活躍できる多様な就業機会を創出し、多様な働く場を整備していく取組みを促進する必要がある。そこで、地域ですでに定着している地域づくりの取組みとの連携を強化し、地域のニーズをふまえた高齢者の働く場の創出と持続可能なモデルづくりや、他地域への展開を推進する事業を実施することとなった。事業は、①「多様な就業機会の創出、持続可能なモデルづくり等」と②「事例収集、実施状況の評価、情報交換会の開催等」の二つの委託事業で構成される。メインの事業となる①は、地域福祉や地方創生などにおいて形成された地域づくりの既存プラットフォーム機能(協議体など)に、就労支援の機能を付加する仕組みの実証事業である。地域の高齢期の就業ニーズをきめ細やかにとらえた多様な就業機会を創出し、地域の関係機関のネットワークにより高齢者の活躍が地域課題の解決につながる好循環を生み出す取組みを展開するとともに、持続可能なモデルづくりを行う。全国から公募により6カ所程度を選定し、事業実施期間は最大3年度間である。②は、①の取組みをフォローし、取組み内容および効果の分析・評価を行い、多様な地域の実情に応じた効果的な手法や持続可能な取組みを取りまとめるとともに、情報交換会の開催やウェブサイトでの発信強化などを通して、他地域への普及促進を行う。事業の目的と射程事業の目的は三つある。一つ目は「『生涯現役社会』の構築による地域社会の持続」。高齢者をはじめとする地域住民の多様な就労ニーズに応える「生涯現役社会」を構築し、生産年齢 高齢者雇用対策として、2021(令和3)年度まで6年にわたり実施されてきた「生涯現役促進地域連携事業」に替わり、2022年度より新たに「生涯現役地域づくり環境整備事業」が実施される。事業の概要とねらいについて解説する。厚生労働省の高齢者雇用対策新事業がスタート「生涯現役地域づくり環境整備事業」で目ざすもの

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