エルダー2022年6月号
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2022.662人口の減少に直面する地域社会の持続につなげる。二つ目は「地域福祉・地方創生等と就労支援の一体的実施にかかる課題の抽出」。すでに地域で展開されている地域福祉・地方創生・農山村等の地域活性化などの取組みと高齢者の就労支援の取組みを一体的に実施することで得られる効果や課題を抽出する。三つ目は「他地域への普及に必要な環境整備に関する政策上の知見の収集」。民間などからの資金調達の方法や、地域福祉・地方創生と就労支援の一体的実施のために必要な環境整備について、今後の政策立案に向けた知見を収集する。一つ目の目的はこれまでの事業と同様だが、後の二つは従来になかった目的である。事業の目的に合わせて、事業の射程も少し変化している。第一は、支援対象者の拡張だ。55歳以上の高齢者を対象に含むことは必須だが、地域の実情に応じて高齢者以外も対象であることを明確にして事業を行うことを可能とした。第二は、多様な就業形態の創出。就業形態の一類型として、企業による雇用を想定するだけではなく、例えばシルバー人材センターなどでの請負委託、有償・無償のボランティアなどの創出に取り組むことが望ましいとしている。そして第三は、自治体事業等との一体的な実施である。地域において、地域福祉や地方創生など地域づくりを目ざす地方自治体の事業や、あるいは民間中心の取組みで構築された協議体などのプラットフォーム機能がすでに機能していることが前提となっている。そうした協議体などを高年齢者雇用安定法第35条第1項に定める協議会として正式に位置づけることが必要とされる。事業の内容それぞれの協議会には、次の事業内容を実施し、創意工夫を活かした独自性のある取組みを推進することが期待されている。(1)多様な雇用・就業の促進地域の既存プラットフォーム機能の基盤のうえに、高齢者等への雇用・就業支援を促進する機能を付加し、効果的な事業モデルを構築する。(2)民間からの資金調達事業終了後も各地域における取組みを持続させるため、民間などからの資金調達に取り組む。資金調達例として、企業から協議会への寄附、協賛企業からの会費、企業からの人材の出向などが想定されている。また、協議会活動の一環として実施する事業活動から収益を得ることも可能としている。(3)事業プロセスの評価事業内容の深化や取組みの拡張など、事業を実施するなかで生じる変化に関する情報や資料などを厚生労働省に提供する。成果に連動した委託費の支払い新事業では、二つの成果に応じて委託費の加減算を行う。一つは高齢者の雇用・就業者実績に対する成果連動で、事業第2年度以降に目標を達成できなかった場合、当年度の委託費の支払いから5〜10%を減算して支払う。もう一つは、民間資金等の調達実績に対する成果連動だ。事業第2年度以降、当年度における民間資金等の調達実績に応じて、委託費に一定額を加算して支払う。ベースとなる委託費は初年度1750万円で、第2年度、第3年度と200万円ずつ減額していくが、雇用・就業者実績で目標を達成し、かつ資金調達実績で上限(第2年度200万円、第3年度400万円)に達すれば、初年度と同じ1750万円が支払われる。さらに、調達した資金は、地域における高齢者などの雇用・就業を促進する目的で行われる活動に充当することができる。実績を上げるほど、事業などに使える資金が増える仕組みとなっている。

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