エルダー2022年6月号
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エルダー63高齢者の多様なキャリアを支援する、持続可能な地域のプラットフォーム構築を目ざすほかの政策との連携による相乗効果を期待今年度、事業を大きく見直した背景には、二つの大きな変化があります。一つは、高齢者雇用対策の政策的な変化です。これまでは、高年齢者雇用安定法によって企業に求める措置を公的年金支給開始年齢の動向に連動させるなど、高齢期の所得保障を主な目的に、定年の引上げや継続雇用制度の義務づけなどを行ってきました。それに対して、2021年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法は、自社による雇用継続だけでなく、多様な就業・社会参加の形態を認めることにより、所得保障の側面だけでなく、社会とのつながりや能力・意欲の発揮を意識した制度へと大きく変わりました。しかし、多様な就業・社会参加を実現するには、個々の企業の取組みには限界があり、地域のさまざまな関係者と協力して取組みの裾野を広げ、強化する必要があります。もう一つは、地域社会の課題をふまえた他施策の変化です。いま、ほとんどの自治体が人口減少・高齢化に直面しています。そこで、地域福祉や地方創生、農山村等の地域活性化など、各省庁の垣根を越えて連携する取組みが進められています。ただ、いずれの政策も多様な就労・社会参加の機会を確保する機能が重要ですが、その機能が各地域で十分に担保されていません。一方、高齢者の就労支援は、これまで企業における雇用を中心に行ってきたため、地域とのつながりが弱い面がありました。そこで、他分野の政策と高齢者の就労支援が連携できる仕組みをつくることによって、相乗効果が期待できると考えています。委託事業終了後に自走しやすい制度にこれまで行ってきた生涯現役促進地域連携事業は、雇用・就業者数の面で多くの団体が目標を達成するなど一定の効果が得られましたが、事業実施期間の終了にともない活動が終了したり、委託費用の漸減にともなって活動を縮小するケースがあります。その原因は、委託先がこの事業のために設立された協議会であるため、委託費がなくなると取組みが終了しやすいこと、そして、将来の自走に向けた取組みが十分に進んでいないことがあげられます。これらの課題に対応するため、今年度は事業の費用対効果を高めるとともに、自立的な取組み継続の可能性を高める視点から、①「雇用・就業者数について一層の成果を実現する」、②「委託事業終了後の自走に向けて民間等からの資金調達のスキーム構築をうながす」、③「地域において定着している他分野の取組みとの一体的な展開をうながす」設計とし、新事業として実施することとしました。多くの企業が、高齢社員の将来のキャリアパスをどうすればよいか、模索されていると思います。社内で検討するだけでなく、こうした地域のプラットフォームを活用し、地域のネットワークのなかで、自社における高齢者雇用をどう進めていくかを検討していただきたいですし、こうした取組みにぜひご参加いただきたいと思います。厚生労働省 職業安定局高齢者雇用対策課長野﨑伸一氏

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