エルダー2022年6月号
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エルダー7特集ビジネスの最前線で輝く高齢者の力とは?なぜシニア人材の活用か65歳以上の人口比率が30%近い世界一の超高齢社会である日本では、シニアの活用が社会的命題となっています。その理由として、まずは生産年齢人口減少による、人材不足への対応があげられます。平成時代に低迷した企業の業績と生産性の向上も求められ、そのなかで進められる定年年齢の引上げや定年制の廃止などの法改正、年金、医療保険などの社会システム維持、さらに技術・技能の伝承という個別企業のサスティナビリティへの対応問題もあります。高齢者を活かすポイントとしては、よく聞くようになったキャリア自律化や、年齢軸にとらわれない人事管理の講策、そして個人と組織の関係が「保証と拘束」から「自律と選択」へと進化する必要があります。職務の明確化と公平な査定の実現、柔軟で多様な働き方と能力開発支援などが重要なキーワードとなっています。企業の対応以上に重要なのが、シニア自身の意識と行動の変革です。技術や時代の変化に対応した職務能力を習得し、自らの手を動かして仕事をこなすことも含め、報酬に見合う価値貢献をすることです。自らの仕事人生へのオーナー意識、役割の認識、規律を持った職務従事、知識を出し惜しみせず、デジタルツールを学び、自分のことは自分でする努力などが不可欠となります。シニア人材を活用する方法シニア人材の活用において、これまでの日本企業の主要な手法であった、新卒などの若手社員を雇用して組織になじませながら育てていくという、長期雇用の手法だけでなく、内部活用と外部活用の二つの形態でのシニア活用を組み合わせることが大事です(図表1)。外部活用には、企業が固定費でのコスト負担を流動費化させることができ、シニアの経験・知識・人脈などをテンポラリーに活かせるという経営上のメリットがあります。加えてシニア自身が健康や生活環境の変化、さらに人生に対する考え方の変化により、多様で柔軟な働き方を望むようになっていることにも合致する手法です。企業がシニア人材を活用するときにも、経験や知識の蓄積を活かす高度スキルに基づく仕事と、逆にあまり負担のないワークスキルに基づく仕事という、対比的な二つのパターンがあると考えられます(図表2)。ビジネスの最前線で活用したいシニア人材の魅力総論株式会社クオリティ・オブ・ライフ 代表取締役 原 正まさ紀のり

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