エルダー2022年7月号
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はじめに~令和期に入り高齢者雇用は70歳就業時代に高年齢者雇用安定法の概要現在、わが国の企業の雇用制度は「実質65歳定年制」の状況にあります。これは平成期に政府が進めた高年齢者雇用安定法(以下、「高齢法」)の改正、そのなかでも2004(平成16)年改正の高齢法(2006年4月施行)が企業に義務づけた「65歳までの雇用確保措置」を受けて、企業で65歳までの雇用確保の環境整備を本格的に進められたことによるものです。その結果、60歳定年制と65歳までの継続雇用制度(その多くは再雇用制度です)の組み合わせによる「実質65歳定年制」の雇用制度が多くの企業でとられるようになりました。そして令和期に入り、高齢法は2020(令和2)年に改正(2021年4月施行、以下、「新高齢法」)され、「70歳までの就業確保措置」の努力義務が企業に課せられ、高齢者雇用は70歳就業時代に向かうことになりました。冒頭のマンガに出てくる若葉さんのように、読者(新任の人事担当者を念頭に置いています)のみなさんは今回の新高齢法が高齢者雇用にどのように影響するのかを理解するのがたいへんかと思います。そこで、総論では2021年4月に施行された高齢法の概要をふり返るとともに、政府統計をもとに現在の高齢者雇用における現状を確認し、70歳就業時代に向けた課題を述べていきたいと思います。まず高齢法が改正に至った背景から確認していきたいと思います。わが国では少子高齢化が急速に進み、2008年の1億2808万人をピークに人口は減少に転じ、それにあわせて労働力人口の減少と高齢化が進んでいます。こうした少子高齢化社会のなかで、経済の活力を維持するには、働き手を増やすことがわが国の重要な政策課題の一つになっています。さらに、個々の労働者の特性やニーズが多様化しているなか、将来も安心して暮らすために長く働きたいと考える労働者も増えており、高齢期になっても能力や経験を活かして活躍できる環境の整備がいっそう求められています。こうした背景のもと、高齢法は2020年に改正されました。新高齢法のポイントは、企業が高齢者の多様な特性やニーズをふまえ、70歳までの就業機会を確保(「高年齢者就業確保措置」)できるよう、改正前の高齢法(以下、「旧高齢法」)の規定(「高年齢者雇用確保措置」)に加え、企業に多様な選択肢を制度として整える努力義務が設けられている点です(図表1)。が定年を定める場合は60歳以上としなければならないこと、第2にそのうえで65歳までの雇用機会を確保するために企業は、図表2の上段に示す三つの制度のいずれかを「高年齢者雇用確保措置」(以下、「雇用確保措置」)として設け旧高齢法の規定は次の通りです。第1に企業図表1 新高齢法と旧高齢法の比較※筆者作成高年齢者雇用確保措置高年齢者就業確保措置旧高齢法新高齢法(65歳までの雇用確保措置)(70歳までの就業確保措置)(義務)(義務)(努力義務)○○×○8

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