エルダー2022年7月号
19/68

変わるキャリア形成のあり方キャリア形成と支援体制の変遷をふり返る解説1では、継続雇用で働いている高齢社員のモチベーション低下が起こる背景と仕事への取組み意識を高めるための課題について、賃金・評価制度から考えてみました。しかし、高齢社員に活き活きと一緒に働いてもらうためには、正社員と同じように彼ら(彼女ら)の仕事の成果を評価して賃金に反映させる仕組みに見直すだけではありません。定年をむかえて継続雇用に切り替わっても引き続き現場で活躍するという意識と業務に必要な知識・スキルや技術を習得してもらうことが必要になります。マンガに登場する若葉さんが勤める会社では、高齢社員が前向きに正社員と肩を並べて仕事に取り組んでいる一方で、キャリア形成の頂点である管理職を役職定年や定年退職で離れ、継続雇用により働いているものの、高齢社員に元気がみられない会社もあります。両者にどのような差があるのでしょうか。キャリア形成の視点から考えてみたいと思います。図表1はキャリア形成とキャリア支援体制の変遷の概要を整理したものです。解説1でも紹介したように、人事管理は企業の経営方針・戦略に基づいて形成されますが、その際には国の労働法制を遵守することが求められます。解説2のテーマである社員のキャリア形成については、さらに社内の労務構成も影響を受けます。昭和期は、戦後長らく55歳定年制が定着していましたが、1970年代に入ると高齢化が始まり、政府は対策に取り組み始めました。1986(昭和61)年に現在の高年齢者雇用安定法(以下、「高齢法」)が制定され、60歳定年制の努力義務化が設けられました。高齢化が始まったといっても2021(令和3)年の高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合:29・1%)に比べ、1970年は7・1%と10%を下回る水準でした。しかし、戦後の1950年(4・9%)以降、一貫して上昇が続いていたので、当時は高齢化対策が求められたのです。こうした政府の高齢化対策を受けて、企業は60歳定年制に向けた取組みを始めました。当時のキャリア形成は管理職を目ざした「のぼるキャリア」が一般的であったため、企業のキャリア支援は管理職になるための研修やサポート体制などが中心でした。高齢社員の活用方針については、定年後も引き続き仕事を続けることを希望する高齢社員が少ないため、正社員と同じように職場の戦特集新任人事担当者のための高齢者雇用入門図表1 国の高齢者雇用政策とキャリア形成の変遷国の高齢者雇用政策社員に占める高齢社員の割合雇用の基本方針活用方針企業の対応キャリア形成のあり方キャリア支援17昭和期前半平成期後半( )は高齢化率エルダー(1970年:7.1%/1985年:10.3%)(のぼるキャリア)60歳定年制の努力義務化60歳定年制の推進福祉的雇用管理職管理職になるために必要な研修やサポート体制等(注)高齢化率の値は、総務省統計局「国勢調査」「人口推計」※筆者作成(1995年:14.6%)(のぼるキャリア)65歳までの雇用確保の努力義務化やや高65歳雇用の推進福祉的雇用管理職管理職になるために必要な研修やサポート体制等(2015年:26.6%)実質65歳定年制の整備戦略的活用への転換(くだりのあるキャリア)65歳までの雇用確保の義務化「定年前に管理職を離れる」への動き役職定年後も一般社員等で活躍するための研修等やサポート体制の整備低高

元のページ  ../index.html#19

このブックを見る