エルダー2022年7月号
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求められる多様で柔軟な働き方の進化平成期の多様で柔軟な働き方の取組みマンガの若葉さんの会社で長年、経理部一筋で働いていた高齢社員の甲斐さんが家庭の事情(親御さんの介護)で退職を考えるまでに至ったことは会社だけではなく、働き続けたいという意識を持っている高齢社員本人にとっても残念なことです(結局、甲斐さんは「在宅勤務」となり退職せずにすみました)。少子高齢化による労務構成の変化、ライフスタイルの変化による就労ニーズの変化・多様化を背景に、解説3のテーマ「多様で柔軟な働き方」に関してさまざまな議論や取組みなどが平成期になされていました。そこで、以下では平成期に進められた多様で柔軟な働き方の取組みと、そのもとでの高齢社員の働き方をふり返り、高年齢者雇用安定法(以下、「高齢法」)改正にともなう令和期の働き方を考えてみたいと思います。■平成期前半~労働時間制度の柔軟化図表1は平成期の多様で柔軟な働き方に関する主な取組みの概要を整理したものです。平成期の議論は主に正社員を対象にした「労働時間」の柔軟化でした。現在、正社員の標準的な働き方は、従業員(正社員)全員が同じ始業・終業時間の労働時間制度(以下、「一般的な労働時間制度」)による、労働基準法に定められた法定労働時間(週40時間)に基づいた1日8時間、週5日のフルタイム勤務です。平成期前半は「労働時間制度の柔軟化」の取組みが進められました。標準的な働き方は1987(昭和62)年の労働基準法改正により、それまでの週48時間であった法定労働時間を週40時間に段階的に変更するとされたことがベースになっています。高度経済成長を経て先進国となったわが国の労働基準を国際的地位にふさわしい水準に引き上げるとともに、労働者の生活の質的向上を図ることを主な目的としていました。この改正で法定労働時間の短縮とともに、フレックスタイム制などの変形労働時間制度の導入が進められました。1993(平成5)年改正(週40時間労働時間制の実施、変形労働時間制度の拡充、裁量労働制の規定の整備など)、1998年改正(企画業務型裁量労働制の導入)、2003年改正(裁量労働制の改正)は経済活動のグローバル化や情報化などの進展、労働者の就業意識の変化などに対応した労働時間などの働き方にかかわるルールの整備を目的とした改正でした。こうした一連の法改正を受けて、平成期前半ではフレックスタイム制、変形労働時間制度、裁量労働制の導入などによる労働時間制度の柔軟化が進められました。特集新任人事担当者のための高齢者雇用入門図表1 平成期の多様で柔軟な働き方の取組みと高齢社員の働き方21エルダー※筆者作成時期平成期前半平成期後半概要多様な働き方の取組み主な内容活用の基本方針高齢社員働き方労働時間制度の柔軟化変形労働時間制度、フレックスタイム制、みなし労働時間制、裁量労働制の整備・拡充福祉的雇用短時間・短日勤務中心労働時間・労働日数の柔軟化短時間・短日勤務(短時間正社員制度)フルタイム勤務中心戦略的活用

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