エルダー2022年7月号
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令和期の新たな「多様で柔軟な働き方」~勤務場所の柔軟化この時期の高齢社員の働き方は福祉的雇用のもと、高齢社員に求められる役割が正社員時代に求められた企業の中核人材として基幹業務をになう役割から、補助業務を担当して正社員を支援・サポートする役割に変わったため、短時間・短日勤務などの柔軟な働き方が中心でした。■平成期後半~労働時間・労働日数の柔軟化平成期後半の多様な働き方の取組みは「労働時間・労働日数の柔軟化」でした。少子高齢化にともなう生産年齢人口が減少するなか、育児や介護との両立など多様化する労働者個々の事情に応じて、多様な働き方を選択できる社会の実現を目ざした働き方改革の一環として推進されている「多様な正社員制度」のなかの「短時間正社員」の導入が進められました※1。企業は正社員に対して原則としてフルタイム勤務を求めていますが、「短時間正社員制度」は育児・介護などと仕事を両立したい社員、決まった日時だけ働きたい入職者、キャリアアップを目ざすパートタイム労働者など、さまざまな人材に、勤務時間や勤務日数をフルタイム勤務の正社員よりも短くしながら活躍してもらうための仕組みです。この時期の高齢社員の働き方は戦力的活用が進むなかで、求められる役割が正社員に近い役割(中核業務をになう役割)に変わったため、平成期前半の短時間・短日勤務中心から正社員と同じフルタイム勤務中心、つまり正社員と同じ働き方に変わりました。もちろん、企業は引き続き短時間・短日勤務の働き方を選択できるようにしていますが、高齢社員を貴重な戦力として位置づけているためフルタイム勤務の働き方を高齢社員に求めています。マンガのなかでも高齢社員の甲斐さんは、再雇用後もフルタイム勤務で働いています。しかし、高齢社員も多様な社員集団の一つとして、正社員と同じように就労ニーズは多様です。とりわけ、加齢にともなう身体機能の低下などが正社員よりも顕著になるため、フルタイム勤務を継続することがむずかしくなることが考えられます。そこで、短時間・短日勤務を選択することも可能ですが、マンガに登場する高齢社員の甲斐さんのように家族の介護や本人の病気治療などの健康問題の場合、短時間・短日勤務に変更してもむずかしく、退職せざるを得なくなってしまう場合もあります。退職は働き続けたい高齢社員にとっても、会社にとってもよいことではありません。総論で紹介していますが、2021(令和3)年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法(以下、「新高齢法」)で新たに設けられた創業支援等措置により、業務委託による就業が可能となりました。業務委託の場合、勤務する場所は会社である必要がなくなりますし、労働時間も本人の裁量で決めることができるので、多様で柔軟な働き方がさらに高まります。方の整備を進める場合、会社の業務特性によって可能なものと、むずかしいものがあることです。若葉さんが勤める会社を例にすると、高齢社員の甲斐さんが在籍する経理部などの事務部門はパソコンなどの勤務環境を整えつつ柔軟な働き方(労働時間と勤務場所)の整備が可能ですが、工場など製造部門の現場に適用することは基本的にむずかしいです。高齢社員を含めた社員がチームを組んで、同じ労働時間でライン業務を行うのであれば支障をきたしてしまいます。労働時間は正社員と同じにするものの、勤務日数を短日勤務にするなどの工夫が必要になります※2。つ、高齢社員の事情と会社の事情をすり合わせて多様で柔軟な働き方の整備に取り組んでいくことが求められます。特に、創業支援等措置は今回の高齢法改正で新たに設けられた措置なのここで注意が必要なのは、多様で柔軟な働きこのように会社の業務特性をベースにしつ22※1 多様な正社員制度には、短時間正社員のほかに、担当する職務内容が限定されている「職務限定正社員」、転勤範囲が限定されていたり、転居をともなう転勤がない「勤務地限定正社員」の二つのタイプがある※2 製造部門の場合、会社(製造職場)に来ないと業務ができないので勤務場所の柔軟化はむずかしい

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