エルダー2022年7月号
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業務上疾病は腰痛が多い労働災害は増加傾向2021(令和3)年4月に改正高年齢者雇用安定法が施行され、多くの企業において高年齢者就業確保措置がとられるようになりました。65歳までの雇用確保に加え、70歳までの就業機会を確保することは、少子高齢化が急速に進むわが国にとって非常に重要な施策の一つであるといえます。働く意欲のある人が年齢に関係なくその能力を十分に発揮できる環境整備として、定年を引き上げたり、継続雇用制度を整えたりすることとあわせて、安心・安全に働ける職場づくりが大切になります。冒頭のマンガにもあるように、腰痛のような労働災害が起こらないようにするためには、職場環境の改善に努めるとともに、労働災害の防止や高齢期の健康・安全に関する研修の機会を設けていくことが大切です。2020年の業務上疾病発生状況をみますと、休業4日以上となった1万5038件のうち、5582件は腰痛症となっています。腰痛は男女かぎらず全年齢において発生していますが、特に中高齢期においては筋力の低下や疲労からの回復能力の遅れなどの要因から、腰痛が起こりやすくなります。腰痛のような運動器疾患は働くうえでの大きな支障となるため十分な対策が必要になってきます。職場における対策としては、重量物の取扱いに関するルールづくりや腰痛予防体操の導入などがあげられます。その日の体調や忙しさなども腰痛の発症につながるので、職場での健康観察や互いに声かけをすることなどにも気を配るとよいでしょう。また、重量物を取り扱っていない軽作業であっても同一の作業姿勢が長く続いたり、姿勢の拘束性が強い職場環境(代表的なものは自動車の運転)の場合は注意が必要です。職場における腰痛予防については、厚生労働省から『職場における腰痛予防対策指針※1』も公表されているので、ご一読をおすすめします。また、後述の『エイジアクション100※2』のなかにも腰痛対策のページがあります。次に、労働災害の発生状況についてみていきましょう。2020年における労働災害の状況としては、死亡した人が802人(前年度から156人(前年度から5545人の増)となっています。死亡例は建設業がもっとも多く(32・2%、258/802人)、休業4日以上では第3次産業がもっとも多くなっていました(51・1%、6万6959/13万1156人)。り、特に全死傷者数の4分の1を占める「60歳以上」では、前年比1213人(3・6%)増年齢別では、50歳以上の年代で多くなってお特集新任人事担当者のための高齢者雇用入門25エルダー図表1 平成30~令和2年までの年齢別労働災害発生状況※1 厚生労働省『職場における腰痛予防対策指針』https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/youtsuushishin.html※2 中央労働災害防止協会『エイジアクション100(改訂版)』https://www.jisha.or.jp/research/pdf/202103_01.pdf43人の減)、休業4日以上となった人が13万150~59歳50~59歳30,38530,38540~49歳40~49歳27,48927,48930~39歳30~39歳18,19918,19920~29歳20~29歳15,28815,288平成30年60歳以上60歳以上33,24633,24660歳以上60歳以上33,71533,71550~59歳50~59歳30,29430,29440~49歳40~49歳26,46326,46330~39歳30~39歳17,43417,43420~29歳20~29歳15,02515,025令和元年~19歳~19歳2,7222,72260歳以上60歳以上34,92834,92850~59歳50~59歳32,12032,12040~49歳40~49歳27,08927,08930~39歳30~39歳18,08218,08220~29歳20~29歳16,41016,410令和2年~19歳~19歳2,6802,680~19歳~19歳2,5272,527(人)14000012000010000080000600004000020000※厚生労働省「『労働者死傷病報告』による死傷災害発生状況」より筆者作成0

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