エルダー2022年7月号
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31エルダー食文化史研究家● 永山久夫うなぎ屋へ 古■■提■■■灯■■を 張りに来る345FOOD本連載2022(令和4)年4月号でも触れましたが、江戸の老人たちは、「八十の手習い、九十の間に合う」といって、高齢になっても、勉強し続けていました。八十歳になってからでも勉強しておけば、九十歳になって、新しい仕事を立ち上げようとするときに役に立つという意味です。江戸時代になって平和が続き、景気がよくなり、長生きする方たちが増えてきたのです。当時は年金などありませんから、自力で生きるしかありません。江戸の老人たちは、生涯現役を目ざして、健康に留意し、勉強を怠■■■りませんでした。寺子屋の先生になる人、川■■柳■■■や俳句、絵画、それに小唄、三味線、踊りの師匠さんになる人など、みなさん多才でした。江戸の老先生や老師匠たちは教養もあり、喋り口もうまいですから、女性にもてます。そうすると男性ホルモンのテストステロンも増えて、さらに若返り、それがまた不老と長寿にも効果をあげるのです。実にうらやましい。その老先生や老師匠さまたちが、好んでいたのがウナギのかば焼きでした。香ばしく焼き上げたかば焼きには、テストステロンの強化に役立つ成分がたっぷりなのです。その一つが生殖機能の老化防止に役に立つといわれているアルギニンというアミノ酸です。次のような川柳もあり、江戸の人たちはウナギの効果を知っていました。老人を「古提灯」に例え、その古提灯も、かば焼きを食べると、たちまち元気になるという意味です。ウナギは元気になるだけでなく、物忘れを防ぐ妙薬としても知られていました。「人の名前が出てこなくなったら、ウナギを食べろ」といわれてきたのです。ウナギには記憶力アップなどの効果で知られているDHA(ドコサヘキサエン酸)が豊富で血液のサラサラ作用で有名なEPA(エイコサペンタエン酸)もたっぷり含まれています。最近注目されているのがウナギに多く含まれているカルノシンという抗酸化の成分。体細胞の酸化、つまり、老化を防ぐ働きがあり、若さを保つうえで役立ちます。江戸のご老人は現代の「長寿法の神さま」ではないでしょうか。女性にもてた江戸の老人長寿法の“神さま”日本史にみる長寿食江戸老人の元気食、ウナギのかば焼き

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