エルダー2022年7月号
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第1回高齢者が活き活き働いている企業のトップに共通することがあります。それは高齢者の活躍が従業員と会社双方の利益になるという強い信念を持っていることです。加えて、高齢者を含めあらゆる年齢層の従業員の話を聴き、高齢者雇用の意義と重要性を従業員にしっかり伝え、世代を超えた幅広い理解と支持を生む風土づくりに取り組んでいることです。若者の多くは目の前の利益や不利益は理解しても、高齢者になったときの自分の姿、そのときに思うことや願うことを想像するのはむずかしいでしょう。「定年延長になれば高齢社員が自分の給料分も持って行ってしまう」と若手が誤解すれば高齢者との断絶が生まれ、若手の退職が増えてしまうかもしれません。若者に高齢期の姿を少しでも現実的にとらえてもらうには、高齢者といっしょに仕事をしてもらい、高齢者が長く働き続ける意欲と能力を持っていることを間近で見て感じ取ってもらう機会をつくるとよいでしょう。高齢者は若手に仕事のやり方だけではなく面白さや達成感も伝えます。若手から高齢者が学べることもあり、若手と高齢者の距離は縮まります。また、成果に応じた評価制度を導入し処遇するなど、若手も高齢者も納得する仕組みをつくることも必要です。その結果、若手の退職も減るのではないでしょうか。少子高齢化が進むわが国では、働き手としての高齢者の重要性がいよいよ高まります。そのため高齢者が働きやすい職場環境の実現も不可欠ですが、その恩恵を受けるのは高齢者だけではありません。柔軟な勤務制度は通院や介護といった事情を抱える高齢者に加え、子育て世代の社員が働きやすい制度にもなります。「働きやすさ」の視点から生まれた制度は、高齢者だけではなく若手や中堅社員の支持も集め、「この職場で長く働きたい」と思える会社が実現します。37エルダー内田 賢(うちだ・まさる)東京学芸大学教育学部教授。「高年齢者活躍企業コンテスト」審査委員(2012年度〜)のほか、「65歳超雇用推進研究委員会」委員長(2016年度〜)を務める。プロフィールすべての世代の社員が働きやすい職場づくりを教えてエルダ先生! こんなときどうする?解 説マンガで学ぶ高齢者雇用新連載! 高年齢者雇用安定法の改正により、70歳までの就業機会確保が企業の努力義務となったいま、定年や継続雇用上限年齢の延長など、高齢者雇用制度を改定する企業が増えていくことが予想されます。しかし、会社や社員の将来のための制度改定も、会社からの説明や社員の理解が不足していると、今回マンガに登場した猫山産業株式会社のように、社員から不満があがってくることも少なくありません。制度改定を進めるうえでのポイント・注意点について、東京学芸大学の内田賢教授に解説していただきました。内田教授に聞く高齢者雇用のポイント若手社員が定年延長の方針に不満を抱えています高齢者と若手の距離を縮め、

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