エルダー2022年7月号
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高齢社員3人のための新しい職域で働く■■制度の見直しも行い、それ以前の定年後の賃金は、年金と合わせて定年前の収入程度まで減額していましたが、定年前の賃金水準を維持する制度に改めました。このような高齢者雇用制度の見直しは、事業の中核をにないボリュームゾーンでもある40代後半から50代の社員が、10年後、15年後にも引き続き能力を発揮し、長く働いてもらうことが同社の発展に不可欠と判断して取り組んだものです。社員ができるだけ長く働ける仕組みを整えてきた安原社長ですが、一方で同社の多くの社員が、定年制を意識せずに働いていることを感じているそうです。「多くの社員が定年制を意識していないからこそ、『定年』という定義はこの会社になくてもよいのではないかと感じています。年齢に関係なく働けるのであれば、同じ仕事を同じように続けてもらいたいものです。そういった意味でも、定年制はなくすのが理想だと思います」竹本プランナーは、社会保険労務士として豊富な実績を持ち、特に賃金・人事分野におけるコンサルティングに造詣が深く、高齢者雇用制度の見直しをはじめ、組織の活性化、従業員のモチベーションアップに向けた支援を得意としています。プランナー活動にあたっては、「いつでも明るく、ていねいに、感謝の気持ちを持って、事業所訪問を行っています」と語る、真摯な人柄で謙虚な気持ちを持ち続けているベテランです。ヤマヒロ運輸には2020年11月に初めて訪問し、安原社長と面談しました。当機構のアンケート調査を例に、制度改正が高齢者のみならず企業にとってさまざまな効果を上げていることをデータで示して、65歳への定年延長と、希望者全員70歳までの継続雇用制度を提案しました。あわせて「雇用力評価ツール」を用いて、同社が高齢者の能力を発揮しやすい体制づくりについてアドバイスを行い、同規模、類似業種の先進企業の事例を紹介しました。竹本プランナーのアドバイスを参考に、同社は2021年2月に就業規則を改定しました。「訪問の際に渡した『65歳超雇用推進マニュアル』※に記載のある『制度改正を進める手順』の項目も参考になったようです。私が提案した65歳の定年年齢を上回って66歳定年に改定されたので驚きました。高齢者雇用に先進的に取り組んでいる会社だと実感しました。安原社長の、人を大事にする経営により、社員一人ひとりが主体的に、活き活きと働くことにつながっている会社です」(竹本プランナー)安原社長のモットーは「先義・後利」。「義理を果たした後、利益がついてくる」という意味であり、まさにその言葉通り、働く「人」を大切にするヤマヒロ運輸の業績は増収増益で推移しているそうです。今回は、高齢社員の活躍の場を広げるために立ち上げた新部署で働く、高齢社員の方にお話をうかがいました。松本祥■孝■さん(73歳)は1年前から車検や事故時に代車を使って対応したり、社内の連絡便の配送や、郵便局に書類を届けるなどの業務を行っています。月に14〜15日ほどの勤務で、土日はお休2022.742社内の連絡便などを担当する松本祥孝さん※  65歳超雇用推進マニュアル……当機構ホームページでご覧いただけます  https://www.jeed.go.jp/elderly/data/manual.html

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