エルダー2022年7月号
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早期退職と希望退職の違いは〝期間限定〟かどうか近年の動向と実施の背景今回は、早期退職・希望退職について取り上げます。ここ2〜3年、新聞などのマスメディアを通して見る機会が多くなった用語だと思います。早期退職と希望退職はセットで表記されることが多い用語で、両者とも「定められている定年年齢よりも前に退職する際に〝優遇〟する」ことを目的とした制度です。しかし両者には大きな違いがあります。希望退職から説明したほうがわかりやすいですが、これは定められた期間内に社員が退職を申し込んだ場合に優遇される制度です。一方で、早期退職は条件を満たした社員はいつでも申し込め、優遇される制度です。要は、希望退職は〝期間限定〟で運用される制度、早期退職は〝恒常的〟に運用される制度であり、時間軸の違いが両者の違いとなります。このため、希望退職は期間限定で申込者を集めるために募集人数を提示し、満たさなければ二次募集などを行うのに対して、早期退職は特に応募人数を定めずに、応募者の条件にあえば受けつけるといった運用が多くみられます。次に〝優遇〟とはどのようなものかみていきましょう。これらの制度がある企業に最も多く設けられているのが、退職金の特別加算措置です。これは通常の退職金に上乗せした金額を支給するものです。割増退職金や退職加算金と呼ばれることもあります。一般的に年収の1年分程度が加算されるイメージが持たれていますが、希望退職応募者の一人あたりの加算金の平均額の平均年収に対する割合は全産業・規模計平均で1・02倍(『労政時報』 第4014号 労務行政研究所 果となっています。あげられます。転職を支援する企業のサービスの活用や転職先の紹介、転職活動に向けた早退の許可や特別休暇の付与、教育訓練の補助などが含まれます。表は主な上場企業の早期・希望退職者を募集した企業数と募集人数の経年推移を示したものです(東京商工リサーチ 表)。全期間では2009(平成21)年、近年では2020(令和2)年・2021年の数が増えています。早期退職・希望退職は別名で人員削減やリストラと呼ばれるように、企業の業績が悪化した際に人件費抑制のために実施され2021年5月)と同等の結このほかの優遇措置としては、再就職支援が次に、近年の動向についてみていきます。図2022年1月20日発2022.750株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之 人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。第26回「早期退職・希望退職」■■■■■■■■いまさら聞けない人事用語辞典

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