エルダー2022年7月号
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企業の高齢者に対する認識が変わった高齢者が持つ能力を活かせる環境づくりを未経験業務のハードルを少しでも下げるような取組みを行ってきた。こうした活動の結果、通年での取組みとなった2017年度以降、就業人数は毎年、目標の100人を超える実績を上げてきた。この人数は市町村レベルではかなり高い数値である。豊中市では、2021(令和3)年度から国の委託費なしで自立した活動を展開している。その結果、イベントの開催数は減少したものの、それまでにつちかった企業との関係性を活かして就労支援活動を継続し、2021年度は就業人数85人、受入企業数68社の実績を上げている。また次の課題として、大手企業を退職した高齢者と地元に集積している中小企業とのマッチングにも取り組み始めている。連携事業の成果について、濱政さんはこう話す。「高齢者が戦力になるということがより多くの企業に理解いただけたことは、非常に大きな成果です。以前は『65歳以上は雇えません』という会社がほとんどでしたが、『実際に会ってみて考えたい』と意識が変わった事業所が増え、高齢者雇用の間口が広がりました」例えば、市内の大手ハンバーガーチェーンでは、それまで働いている高齢者は、ほとんど見かけなかったが、連携事業を通じて18人が働くようになった。「採用してみると、高齢のお客さまに気さくに声かけをしたり、テーブルを片づけるなど、若いスタッフでは気づかないようなところに自ら気づいて動いてくれることなどが評価されています」また、大手コンビニエンスストアでは、高齢者宅への宅配が多いため、単に品物を届けるだけでなく、ちょっとした声かけを行うなかで、体調の変化に気づくなど地域の見守り活動の役割をになっていると評価されているという。「このように、いままで若者の仕事と考えられていたサービス関連分野でも、高齢者を雇用することにメリットがあることが、連携事業を通じて明らかになりました」最後に濱政さんは、高齢者雇用を定着させるための二つのポイントをあげてくれた。「高齢者は、誇り高く、これまでの経験に自信をお持ちの方が多いです。また、本人が生活に困っていない場合、自分の価値観に合わない仕事だと、働こうと思わない方が多いようです。そういう方に対しては、やってもらう仕事の価値をアピールしたり、その人に対する期待感を表すことが大切です。『人手不足だから来てください』ではなく、その仕事がどのように社会に貢献しているのか、なぜこの仕事をあなたにしてほしいのか、といったことをきちんと伝えると、採用につながりやすいと思います」できるような環境づくりだという。「あるサービス関連企業の担当者は、『高齢のスタッフが生きたマニュアルになってくれる』と話していました。例えばクレーム対応など、若いスタッフではままならないような場合でも、高齢のスタッフがうまく治めてくれる場合もあります。このように、長い人生経験のなかでつちかわれた対応力は高齢者の武器です。高齢のスタッフの存在が、若手にも好影響を与えており、その企業は高齢従業員の定着率も高くなっています。こうした能力に応じた役割を与えて、それを周囲が評価するような職場環境が大切だと思います」齢者の活躍の場が数多くあることがうかがえるとともに、地域社会の支え手となれる人材であることがよくわかる。もう一つのポイントは、高齢者が能力を発揮豊中市の事例から、サービス関連産業には高63エルダー

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