エルダー2022年8月号
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いか」、「開発者は男性ばかりではないのか」など全部を点検して強いものにしていかないと勝てないわけです。これは対症療法的に行えばよいことではなく、もっと根源的にビジネスのあり方と社会への役立ち方をまずは経営者が深く理解する、そこから社員に浸透させていくことが重要だと思います。―SDGsはトップダウンでないと進ん帰納法的思考※4と、ビーチクリーンがいらないビーチにするためにはどうすればよいかという逆算的思考である演■繹■法的思考※5を組み合わせていく必要があります。ト」※6という言葉をよく聞きますが、実はバックキャストだけでは物事は動かなくて、目の前の課題を一つずつ解決していくことと、バックキャストによる思考をどうやってつなげていくかという思考が抜けているのです。これを私はSDGsサンドイッチと呼んでいます(図表2)。んでいけない会社がまだ多いと感じます。いまあるものであと何年食べていけるかといった対策だけだと、20年後、30年後に仕事がなくなってしまうのです。こういうビジョンを描けるのはボトムアップでは無理です。これは経営者、ないしは20年後、30年後に会社を本気で背負っていくと考えている事業継承者たちに必要な思考だと思います。﹁欲﹂から﹁徳﹂への価値観の転換SDGsの意義を理解して取り組み始めたシニア世代――    ■■9代と若者たちのかかわり方はどのようにあるべ演繹法的思考といえば最近、「バックキャス日本には、目の前の課題を解決しても前へ進―SDGsへの取組みのなかでシニア世でいかないのでしょうか。田瀬 もちろんボトムアップで進められる場合もあります。すでによい組織、強い組織を持っている企業はボトムアップが有効だと思います。ESGのなかでも脱炭素や人権、生物多様性などは他社との比較が点数で出るので、こうした領域を扱うリスクマネジメント担当やIR担当から、客観的な数値などで提案すればボトムアップで進めていきやすいといえます。一方で、事業の中長期的な見立てなどは経営層でないと行えませんから、トップダウンでのアプローチとなるでしょう。また、目の前にある課題の解決だけでなく、将来あるべきグランドデザインをしっかりと描いて、そこに向かって舵を切ることも、トップダウンでないと行えません。例えば、砂浜のゴミ清掃は「ビーチクリーン」といって素晴らしい活動だと思いますが、本当はビーチクリーンをしなくてもよいビーチ、つまり、だれもゴミを捨てないビーチであればよいのです。このように、目の前にある課題を取り除いていくことも重要ですが、そもそも課題が発生しないためにはどうしたらよいのか、グランドデザインを目の前にある課題の解決と同時に考えないと、いつまでたってもビーチクリーンから進みません。ビーチクリーンという※1 CSV……共通価値の創造 ※2 SCM……サプライチェーンマネジメント ※3 D&I……ダイバーシティ&インクルージョン特集SDGsと高齢者活用※4 帰納法的思考……さまざまな事実や事例から共通点などをまとめて、それを基に結論を導き出す思考法※5 演繹法的思考……一般論や普遍的事実を基に、結論を導き出す思考法※6 バックキャスト……目標となる未来を定め、未来を起点に逆算してやるべきことを考える思考法利益と社会的善良い事業・強い事業良い組織・強い組織エルダー図表1 SDGsに必要な経営理念(心)、事業(技)、組織(体)の融合人権・環境・ガバナンス・D&I※3などのESG配慮©SDGパートナーズ①経営理念視点(心とありたい姿)何をだれに売りたいのか。どのような商売をしたいのか②CSV※1視点(技と筋力)イノベーション、SCM※2、環境配慮、品質向上、信頼性獲得、工数削減③ESG視点(体、特に内蔵)じわりじわり(相関から因果関係へ)お返しお返し恩返し恩返しフィランソロピーCSRボランティア

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