エルダー2022年8月号
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演繹法的思考あるべき姿からの逆算帰納法的思考いま持つ資源・能力くなろう」という多極主義と、「自分さえよければよい」という人たちが国際社会でせめぎ合いを続けてきました。そのなかで人々や企業が求めたものは、自分たちの安心・安全・快適だったといえます。ここまでは「欲」の追求でした。しかし、SDGsから先は、自分らしさやウェルビーイング、パーパス、あるいは社会に対する使命感など、追求するものが「欲」から「徳」へ移行しています。「﹃自分さえよければよい﹄という価値観は許さない」という流れです。では、いまのシニア世代には徳がないのかというとそんなことはありません。社会情勢の変化や時代の要請を受けて、そこに対応してきたシニア世代が、後に続く世代を育ててきたのです。大量消費や自分たちの快適さを追求する時代を生きると同時に、「人の役に立つ」、「社会の役に立つ」ことの重要性を、次の世代に伝え続けてきたからこそ、いまの若者は、いまの社会に必要な価値観を身につけているのです。そういう意味では、シニア世代と若者に断絶はありません。むしろどこか心の中で「人の役に立ちたい」といった徳の部分を持っているシニアの人たちもいて、そういうふうに生きられなかった時代背景がここに来て転換したので、ようやく自分たちの時代が来たと思っている方も多いと思います。すでに取組みを始めています。そして若者をはじめとした次の世代の人たちはその様子をちゃんと見ています。そういう意味でシニア世代は生涯現役を貫き通して、最後まで自身のノウハウや技術をとことん次世代に教えてほしいと思います。逆に若い世代はシニア世代が身近にいるうちにすべてを学び取ってもらいたい。こうして世代間で意義のある事業や技術を承継して発展させていくことが、SDGsの達成につながる道だと思うからです。そんな方たちはSDGsの意義を理解してきでしょう。田瀬 私はこれまでのビジネススタイルを否定する気はまったくありません。1990年ころまでの高度成長期は「欲」が充足されていなかった時代だと思います。そのため大量生産と大量消費で経済が回っていました。団塊の世代の人たちはまさにこのために一生懸命働いてきたわけです。一方で冷戦の終結以降は「みんなでよ現状の課題を特定し、それを解決するためにはどうすればよいか論理的に考える©SDGパートナーズその場の状況に対処しつつ現状の延長線上にある成長SDGパートナーズ有限会社代表取締役CEO 田瀬和夫2030年、2050年、さらにその先の理想的社会を考え、そのなかで自社がどのような役割を果たしているか想像するたせ・かずお1967(昭和42)年生まれ。東京大学工学部原子力工学科卒。外務省、国連事務局広報センター長などを経て、2014年にデロイトトーマツコンサルティングの執行役員に就任。SDGsとESG投資をはじめとするグローバル基準の標準化、企業のサステイナビリティ強化支援を手がける。2017年9月にSDGsに関する講演や総合コンサルティング業、企業のESG対応を支援するSDGパートナーズ有限会社を設立して現職となる。図表2 SDGsサンドイッチの概念図   現状現在解決策あるべき姿20xx年2022.810

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