エルダー2022年8月号
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lつういう ぶろ 前田展の弘ひ「SDGs︵持続可能な開発目標︶」と高齢者との関係性ニッセイ基礎研究所生活研究部上席研究員・ジェロントロジー推進室兼任 高齢者がになうSDGs︱生涯現役と生涯貢献の実現へ︱Persons「高齢者がになうSDGs」とは何か、これを述べるにあたり、まずSDGsと高齢者との関係性を整理する必要があります。SDGsは周知の通り、「世界と人類全体で、“誰一人取り残さない”持続可能で多様性と包括性のある社会を創る」ことを目ざした世界の開発目標です(2015〈平成27〉年9月の国連サミットにおいて全会一致で採択)。経済・社会・環境問題を中心に17ゴール・169ターゲット・231指標が設定され、各国がその達成に向けて包括的に取り組むことが求められています。国連サミットで採択された際の成果文書※1にある“我々が目ざすべき世界像”には、「すべての人生が栄える、貧困、飢餓、病気および欠乏から自由な世界」、「最も脆弱な人々のニーズが満たされる、公正で、衝こ平へで、寛容で、開かれており、社会的に包ほ摂せな世界」、「すべての国が持続的で、包摂的で、持続可能な経済成長と働きがいのある人間らしい仕事を享受できる世界」といったことがあげられています(世界像の一部を抜粋)。こうした世界の実現に向けて、改めて高齢者がになうことは何か(期待することは何か)を考えると、次の二つのことがあると考えます。一つは、「次世代(子どもや若者)のために生きがいのある豊かな“人生モデル”を築く(実践する)」こと。もう一つは、「社会の未来のために年齢にかかわらずいつまでもあらゆる形で社会や次世代を含むさまざまな人々に“貢献”し続ける」ということです。抽象的かつ包括的な表現ですが、それぞれの目標(ゴール・ターゲット・指標)が求めているもっとも大きなことは、開発途上国や子ども・若者、および脆弱な立場にある人々の安心で豊かな「未来」を築くために何が必要か(すべきか)ということなので、このことを高齢者の役割として考え直すと、上記の2点に集約できるのではないかと考えました。日本独自の視点といえるかもしれません。と申し上げるのは、国連の議論においてSDGsの達成をになう立場として必ずしも高齢者は位置づけられていないと思われるからです※2。ゴール・ターゲット・指標のなかで「高齢者(Oder ル2「飢餓をゼロに」のなかのターゲット2・2、ゴール11「住み続けられるまちづくりを」のなかのターゲット11・2、11・7の3カ所のみでなお、この解釈は筆者の私見であると同時に、)」という文字が確認できたのは、ゴー特集SDGsと高齢者活用※1 「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」(国際連合広報センターHPより)※2 あくまで筆者の見解です11エルダー

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