エルダー2022年8月号
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人生100年時代の生き方モデルとSDGsんんそした※3。また、前述の成果文書のなかで「脆弱な人々」を説明しているところでは、「高齢者を含む」と記載されています。つまり、世界の見方としては、高齢者は「社会が支えるべき対象」、SDGsをになうというよりはむしろSDGsの達成により恩恵を享受する対象ととらえていると思われます。多様な高齢者の一面しか見ていないという印象を持ちましたが、いずれにしても、“高齢者がSDGsをになう(社会を支える)”という視点自体、人生100年時代を迎える高齢化最先進国の日本ならではの、ある意味誇らしい発想といえるかもしれません。では、一人ひとりの高齢者が具体的にどのようなことを意識して、どのようなことに取り組んでいくのがよいのでしょうか。前述の「人生モデル」と「貢献」の二つのことを同時に考えていきます。先に結論を申し上げると、そのポイントは“生涯現役”、“生涯貢献”です。「人生100年時代」という言葉が喧け伝でされていますが、人生100年にふさわしい生き方のモデルは、世界のどこを探しても見つかりません。現時点では「ない」のです。その理由は、これだけ長生きできる人が増えたのが近年になってからだからです。定年のある会社員を前提に話を進めれば、リタイアした後、30~40年にも及ぶ可能性がある人生を残していますが、その間の生き方、暮らし方、活躍の仕方がよくわかりません。そうした高齢期の実態を眺める若者の多くは、長寿の人生(未来)を描けず、将来に対して希望よりも不安ばかりを募らせている状況が見受けられます。では、どのような生き方が理想なのでしょうか。モデルを考えてみます。図表1は、会社員を前提に描いた就労モデルです。現在は、パターンA(65歳までの生計就労)が標準形だと思いますが、国の政策(70歳までの就業確保措置の努力義務〈2021年4月施行〉)などにより、パターンB(70歳までの生計就労)へのシフトが社会として模索されている状況にあると思います。パターンCは65歳までは生計就労に勤いしみ、65歳以降は自宅のある“地域”のなかで生きがい就労を“楽しむ”モデル、パターンDは若いときからさまざまなキャリアを流動的に積み重ねながら歩んでいくモデルとして示しています。なお、パターンAおよびBの状況を客観的に見ようとしたものが図表2になります。厚生労働省が毎年調査している「高年齢者雇用状況報告」をもとに、企業の定年制の状況などを整理※3 2.2「5歳未満の子どもの発育阻害や消耗性疾患について国際的に合意されたターゲットを2025年までに達成するなど、2030年までにあらゆる形態の栄養不良を解消し、若年女子、妊婦・授乳婦及び高齢者の栄養ニーズへの対処を行う」11.2「2030年までに、脆弱な立場にある人々、女性、子ども、障害者及び高齢者のニーズに特に配慮し、公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、すべての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する」11.7「2030年までに、女性、子ども、高齢者及び障害者を含め、人々に安全で包摂的かつ利用が容易な緑地や公共スペースへの普遍的アクセスを提供する」※「生計就労」は生計のための就労、「生きがい就労」は本人の生きがいや健康などをより重視した就労という意味で表しています※筆者作成従来型単線モデル単線延長モデル生計→生きがい就労モデルマルチキャリア流動モデル12図表1 人生100年時代の活躍の仕方のモデルパターンパターンAパターンBパターンCパターンD20歳50歳生計就労(~65歳)生計就労(~70歳)生計就労(~65歳)65歳75歳地域における生きがい就労85歳100歳

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